第三夜 もしも時間が戻せたら
このリセットボタンを有効に用いる為に併せて、我々はある統計ソフトウェアを作りました。そのソフトウェアに算出させた所、次の使用者として貴方を導き出したのです。
それは一体どういう基準なんだ?
その基準とは、この社会を善くする確率です。社会とは合理的に具現化された一つのシステムであります。しかし、ご存知の様にシステムである以上、必ず何らかの誤動作や歪みというものが存在します。その歪みを解消出来る手段がリセットボタンです。但し歪みが取り払われた場合、その後の未来にも影響が出ます。その影響すらも最小限に抑えられる可能性として選ばれたのが、貴方様という訳です。
何だか難しいな。
ソフトウェアは非常に優秀ではありますが、万能ではありません。ですので私共はけして強要はせず、ユーザーたる貴方様に判断をお任せするのです。ここは一つシンプルにお考えください。ボタンを押すか、押さないかです。
…押すか、押さないかか…。
とても今すぐには決められない。時間の猶予は?
お気持ちはお察します。直ぐの決定は難しいでしょうから機器を2日間お預け致します。このリセットボタンにはビーコンが組み込まれておりますから、たとえ貴方様がボタンを押して過去に戻られたとしても、やはり過去にいて追跡調査をしている私共が、現れたボタンの回収を行い、同次元に複数のボタンが存在しない様に随時破壊します。また時空間移動は身体に高負荷が掛かりますので、リセットボタンは一度しか押せない様に設定しておりますので、予めご承知願います。
……判った。
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