第502話 マッシュルームの刑で九尾なのじゃ

【前回のあらすじ】


 剣を軽く一振り。

 まるでファンタジー小説のように一瞬にしてカタクリを回収してしまったカーネギッシュ。

 そして彼は爽やかな笑顔で、桜にそれを差し出すのだった。


 しかし、見返りの代価は大きい。


「僕は友達に飢えていてね。どうだい、僕たちこれから、友達――いや、舎弟マブダチにならないかい?」


 元ネタともなかなかいい性格をした男だったが、それにも増していい性格をしているカーネギッシュ。恩着せがましく親切にして、どうやら桜にマウントを取りに来たようであった。


 何事にも旨い話などないものである。


◇ ◇ ◇ ◇


「のじゃ。なるほどのう。それでなんとかカタクリの根については手に入れることができたという訳なのじゃ」


「……あぁ」


「桜やんの尊い犠牲の果てにな。ほんま、桜やん、ごくろうさまやで」


「……あぁ」


「のじゃぁ。桜よ、わらわは別にその髪型も悪くないと思うぞえ。よいではないか、こちらに来てから散髪にも行けていなかったのじゃし。まぁ、その代金が浮いたと思えば……」


 そんな風にこのマッシュルームヘアーを思えるのは、当事者じゃないからですよ。


 ぷっ、くふふと、顔を逸らして頬を膨らます加代。

 そして、同じく、頭の葉をしなだらせて小刻みにバイブする腐れダイコン。


 友情の証。


 そう、舎弟マブダチとしてカーネギッシュと契りを交わした俺は、その場でその誓いを立てさせられることになった。まぁ、てっきり杯でも交わすのかと思ったらこれである。


 友情の証ベアヘアセット

 そらもう立派なマツタケヘアーにされてしまい、歩く猥褻物桜くんになった俺は、ただただ意気消沈することしかできないのだった。


 やっぱり性質が悪いなあのマッシュルーム野郎。

 ちくしょう、親切だと思ったのに騙されたぜ。


「だぁーもう、やってられるかこんな頭!!」


「まぁ、掻きむしってしまえばそれまでなのじゃ」


「せやで桜やん。マッシュルームカットは何気にヘアセットが難しいから、ちょっと散らせばすぐに分からんようになるで。それで正解や」


 さっさとシュラトと合流して元の街へと戻るとしよう。

 またカーネギッシュに目を付けられて、絡まれてしまったらたまったものではない。絶対に、同じ髪型にしていないことをねちねちと言ってくるに違いないぞアイツ。なんていうか、そういう感じの匂いがひしひしとする。


 とりあえず、捜索に数日はかかるだろうと取った宿に俺と加代は急ぐ。

 あてがわれた部屋で待つことそれから数刻――部屋の扉が開いたかと思うと、そこに人影が差した。


 しかし――。


「た、大変です、桜さん!!」


「……アリエスちゃん?」


「のじゃ。どうしたのじゃ、アリエスちゃん。そんな息を荒げて」


「ダークエルフの火照った体とか絶妙にエロいやん。褐色の肌がさらに赤みを増してエロス倍増やん。最高やん。最高ファンタジーやん」


 とりあえず、煩い大根太郎を潰してリスポーンさせて黙らせる。

 なにやら抜き差しならない感じでやって来たダークエルフの女に、俺と加代が目を剥く。すると彼女は、なにやら苦虫を噛み締めるような顔をして――。


「シュラトさまが、行方不明になりました!!」


「な、なに!?」


「のじゃ!! まさか、誘拐なのじゃ!?」


「まさかの連続イベント発生!! これはあれやで、シティアドベンチャーと見せかけての、冒険活劇の可能性が微レ存やで!!」


 いえ、あの、その、と、たどたどしい感じに口ごもるアリエスちゃん。

 それから、もうとっくに納まっていいだろう感じに頬を赤らめて彼女は、ぽつりとつぶやくように俺たちに言ったのだった。


「その……すみません、言葉を選びました。行方不明は行方不明でも、迷子という奴です」


「いい歳して!!」


「迷子!!」


 そういや最初に会った時も、変な所で溝に嵌ってたもんなアイツ。

 今回の依頼もそうだし――。


 実は見かけに反してあんまり頭よくない系だな。

 シュラト。


 なんにしてもあまりに間抜けな連続イベントに、俺と加代は魂が抜けたようなため息をこぼすのであった。


「す、すみません……シュラトさまがその、あまり、あれで……」

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