第418話 割と庇えなくって九尾なのじゃ

 さて。

 加代がロリ化してから週末が明けた。

 明けた――のだが。


「戻らないんだが」


「のじゃぁ。戻らないのう。なんでなのじゃ」


 いろいろあったが週明け、加代は未だにロリのままだった。

 のじゃロリ加代ちゃんのままであった。ちみっこい狐娘のままだった。


 えぇ、なにそれ、どういうこと。


 このままのじゃロリ狐娘路線で行くっていうことなの。

 勘弁してよ。俺、加代さん属性はあっても、のじゃロリ属性はないのよ。


 だいたい、この手の分野ってもう開拓しつくされて、今更ロリった所でどうこうなるもんじゃないじゃないのよ。わざわざニーズのある所に足を突っ込んでいく意味あります。


 大人で貧乳でのじゃぁで九尾だからいいんじゃないか。

 そういう加代ちゃんが俺は好きなんじゃないか。

 だというのに――。


「アイディンティティクライシス!!」


「その前に会社を九尾になるクライシスなのじゃ!!」


 加代が叫んだ。


 まぁ、そうだわな。

 まずは気にしなくちゃならないのは、そっちについてだわな。


 せっかく安定的に雇ってもらっている、我が社のサーバー保守のお仕事をこのままじゃクビになっちゃうかもしれない、危機だものな。そりゃ加代の奴も危機感抱くのは仕方ないわ。というか、危機感抱かないとヤバいわ。


 昨日の残り物であるレバニラ炒めとやまかけ丼を食べながら、俺と加代はどうしたもんかなと顔を見合わせるのだった。


「有給はどうなの、残ってるの?」


「のじゃぁ。それは大丈夫。代休が残ってるレベルなのじゃ」


「じゃぁもう、体調不良で休んじまえよ。というか、そうするしかないんじゃない。最悪、四日休んだとして――それくらい休めばなんとかなるだろう?」


「のじゃぁ。そう信じたい所ではあるが。二日経ってこの体たらく、こりゃひょっとすると重症なのかもしれないのじゃ」


 四日休んでも治らない可能性が高い。そう言いたいのだろうか。

 流石にそれは気にしすぎじゃないか――とは、実際、この二日でまったく体に変化がなかった、加代を前にして言うことはできなかった。


 十分考えられる話である。

 とすると、休んでも根本的な解決にはならない。


「……まぁ、お前みたいなポンコツを雇っている会社だしなぁ」


「……のじゃぁ。信じてみるしかないかのう」


◇ ◇ ◇ ◇


「ハテテ、カヨサン、チビッコ、ロリロリ、ヤッバ、ノジャロリ、ヤババ」


「だからなんでうさく〇なんだよ」


 結局、加代はロリ化したまま会社に出社した。

 総務の人に連絡して、直属の上司に連絡して、ついでに社長にも連絡して、まぁ、かかる事情を理解してもらった。


 弁当の仕出し会社の方にも行ったそうだが――なんにしても、そういうことならとクビにはならずに済んだようである。


 なんだよ加代ちゃん、ロリになった方が生きやすいじゃないか。

 お前、一度にクビを二つも回避するなんて。この作品始まって以来の快挙なんじゃないの。もうでていけあんたは九尾さん撤回して、愛されのじゃロリ狐加代ちゃんに改題した方がいいんじゃないの。


 まぁ、なんにしても、いきなりロリになってしまった狐を見捨てる訳にはいかない。うちの会社も、弁当の仕出し会社もそこは鬼じゃなかった。


「のじゃぁ、なんとか理解してもらえてよかったのじゃ」


「よかったな加代さん」


「のじゃぁ。いい会社に就職したのじゃ」


「まぁ、クビが繋がったのは素直に喜ぶとして――」


 体形はそのままなんだからあんまり無理するなよ。

 そう声をかけると、分かっておるのじゃと、加代は屈託なく笑うのだった。


 ふむ。まぁ、この調子なら、きっと大丈夫だろう。

 なんにしても、うちの会社がホワイトな会社で本当によかった。労働者の事情に理解のある会社で本当によかった。


 本当に、本当に。


「……ところで、サクラッチョ」


「なんだよサクラッチョって。少し前のラップかよ」


「カヨチャ、セッセセ、ヤチマタ、マイガ?」


 だからなんでうさく〇ネタなんだよ。

 そんな怒りを込めて、俺は目の前のロリコン野郎をぶっ飛ばしたのだった。


 YESロリコンYES昇竜拳である。

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