第417話 職務質問で九尾なのじゃ

 しかしまぁ、加代がロリになったのが休日で助かった。

 これが平日だったら、会社にどうやって言い訳をしようか、仕事をどう調整しようかと大変なことになっていた。とはいえ、一日二日、それが伸びただけで、根本的な解決にはなっていないのだけれど。


「なんにしても、精のつく料理を食べて、ゆっくり休んでリラックスするのが大切なのじゃ」


「なんでい、そんなので治るのか。俺はもうてっきり、しばらくこのまんまかと思ったよ。ふぅ、焦っちまったぜ」


「焦りすぎなのじゃ。別にちっさくなってもできることはそう変わらないのじゃ」


「本当かなぁー? 加代さん、おっきくてもできることそんなにないのに、変わらないって本当かなぁー? あ、できならいなら変わらないかー?」


「のじゃぁ!! なんかちっさくなってから意地悪なのじゃ!!」


 ぷんすこと手を振り上げても、俺の顔まで届かない加代さん。

 はっはっは、これはこれでかわいらしいものがある。

 そしてからかい甲斐もある。


 最初小さくなったときは、どうなることやらと思ったが、これなら平穏無事に生活していけそうだ。


 まぁ、その、夜の仲良しは――仕方あるまい。

 そこは割り切ろう。同居人が辛い時にその気持ちを分かってやれないのは、やっぱり男としてどうかと思うしな。


「なんにしても、ゆっくり休んで、しっかり治そう」


「おう、なのじゃ」


「という訳で、今日のご飯はなに?」


「とろろにうなぎにニンニクマシマシのステーキにレバニラ炒めなのじゃ」


「あぶりゃげ成分まるでねえなぁ」


「まぁ、精を付けるのにあぶりゃーげではのう。元気は出ても、妖力は戻らないのじゃ。好物と体に効く食べ物は別ということじゃ」


 栄養ドリンクもまずい方がよく効くであろうと、したり顔でいう加代さん。

 確かにそうだなと納得した俺の背中で。


「フリーズ・ドント・ムーブ」


 かちゃりと撃鉄の起こる音がした。

 うわぁ、なにこれ。今朝から非現実的な展開が続いてると思ったけど、いきなりなんかキッツイ感じの展開になりましたよ。


 というか、日本で絶対に聞くことのない音と台詞がしたんだが。


「ターン・レフト」


 言われるままにくるりと右に回ると、そこにはいつぞや――学校を覗き込んでいたら職質された警察官さんがいた。

 うぅん、今日も交番勤務ごくろうさまです。


 そりゃそうと、その物騒なものを下ろしていただけませんかね。

 割とガチで怖いです。


「貴様!! そんな幼女を連れて、いったい何をするつもりだ!!」


「……いや、これは俺の同居人で」


「未成年者誘拐か!? 未成年者誘拐だな!? 未成年者誘拐だ!!」


「違います!! 彼女はその、俺の大切な家族です!!」


「家族ぅ……まったく似てないじゃないか」


 いやそりゃねぇ、別に血のつながった相手じゃないし。

 家族と言っても狐だし。そりゃ、似ているはずがないじゃないですか。


 えらい男に捕まってしまったなぁと、そんなことを思いながら、俺と加代は顔を見合わせる。すると、彼は空に向かって銃を撃ち放った。

 おうい。そんな気軽に発砲するもんじゃねえだろ。バカ〇ンじゃないのよ。


「本官の質問にだけ答えろ!! 次に怪しい動きをしたら、ズドンだぞ!!」


「嘘だろおい!! 俺を捕まえるのに銃を使う必要あります!?」


「舐めるな!! 俺は柔道――白帯だぁ!! 銃に頼らなくちゃ平和を守れない弱腰コップ!! この銃だけが俺の勇気!!」


「よくそれで警察官になろうと思ったな!!」


 それより貴様、その女の子に持たせている袋はなんだと、彼はスーパーの袋を指さした。いや、普通に食材ですが何かと返したのだが――彼は有無を言わさずそれをひったくると、中身を検めだした。


 あぁあぁ、それ、やっちゃいけない不正捜査だろ。

 ちょっと見せてくださいって、任意で見せてもらわないといけない奴なのに。

 というか、外からみてもただのスーパーの袋なのに、何やってんだこの人。


 と、あきれている俺の前で、どんどんとなぜか警官の顔が赤くなっていく。


 何故だホワイ。

 赤くなる理由なんてある――。


 あるな。


「とろろ!! うなぎ!! ニンニク!! ステーキ!! レバ!! ニラ!!」


「あ、はい、普通の食材だと思いますが」


「……普通の食材だとォ? こんな精を付けて、貴様、その幼女になにをするつもりだ!!」


「何もしませんよ!! というか、想像力逞しすぎません!!」


「この変質者め許さん!! お嬢ちゃん!! こっちに来るんだ!! さぁ、はやく!! お嬢さんの平和と、この世の平和――そして、ロリコンの秩序はこの俺が守る!!」


「なに言ってんの!?」


「ダメメ、リアル、ノータッチ、バーチャル、イエス、タッチ、ロリータ!!」


 なんで今週うさく〇ネタばっかりなんだよ。

 というか、この警官の方がいろいろとヤバいんじゃないのか。


 さぁ、早く離れるんだぁ、そう叫ぶ彼を前に俺はため息を吐き出した。


 はぁ、思った以上に、のじゃロリ生活は大変そうだなぁ。

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