おぶつぶ!

百壁ネロ

第1話:来たときよりも美しく

 私、飴猫あめねこ小々奈ここなは、今日からこの粘ヶ丘ねばりがおか高校の生徒になりました。


 私がこの学校を受験した最大の理由は、なにを隠そう、部活の種類の豊富さとマニアックな品ぞろえにあるのです。

 何気なく手に取った入学案内のパンフレットを開いて全身にビリビリッと電流が走ったあの日あのときあの進路指導室でのこと、今でも鮮明に覚えています。

 高所部、閉所部、踏み部、踏まれ部、歯牙研究会、瞳孔同好会、鼻腔愛好会……。

 部活動紹介のページに所せましと記された、まるで聞いたことのない部活の数々。

 その中で、私がひときわ強く強く『ここに入りたいっ!』と思った部活。

 それが――。


「…………うーん。部室って、ここであってるよね……?」


 古びた木製のドアの前で、私はかれこれ十数分、新入生用の学校案内パンフレット片手に首をひねり続けています。

 だってここ、部室っていうか、どこをどう見たって……。


「……女子トイレ、だよね?」

「そうだ」


 びくっっ!

 突如耳元で囁かれたその凛として、でも掠れた声に、思わず体が跳ねました。


「キミは用を足しに来たのか? だったら悪いが、ここはいま部活で使ってるから、他の手洗いを使ってもらえるかな」


 透き通るような白い肌と長く艶やかな黒髪のコントラストが映える、美しいったらない外見のその先輩は(わからないけどきっと先輩です、凛々しい雰囲気的に)、静かに私の横を通りすぎて、トイレのドアに手を掛けて――――と、


「あ、あのっ!」


 思わず私は、先輩のその白くて細い手を握っていました。


「こっ、ここって、その……お、『汚物部』ですか?」


 怪訝な目で私を見、小さく頷く先輩。

 それを見て私は、静かに、すううっと息を深く深く吸い……そして。


「わ、わ、私っ、お、お、汚物に入りたいんですっ!」

「……『部』じゃなくて、汚物そのものに入りたいのか? ……肥溜め、行くか?」

「…………あ、えと、間違えました」


 とにもかくにも、こうして、私の汚物にまみれた高校生活が幕を開けたのでした。

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