第10話

 そのおじいさんランナーがウエストポーチから飴を取り出したとき、ぽとっ、と何かを落とした。あっ、と声を掛ける前にヒタヒタとそのおじいさんは前へ前へと進んでしまっている。歩くか走るかのスピードのわたしがようやく落とし物を拾う。


「お守り?・・・」


県の一の宮である神社のお守り。


このお守りが無いと、完走できない?


躊躇するけれども、すぐに、よっし!とおじいさんを追いかけ始める。


「速いなー」


わたしも体にむち打って、なんとかそのおじいさんに追いつく。


「あの、これ。落としましたよ」


わたしがお守りを見せるとそのおじいさんは。


「やー、お嬢さん、ありがとう」


おじいさんは何度も頭を下げて、また自分のペースで走って行った。


わたしの体には無理して追いついた負担がドバっと湧き上がってくる。


「うー」


この後、どうしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る