「感情に流される」もしくは「顔に騙される」の始まり。

いやいやいや……。

あたし、好きって言ったかな?


「そもそもわたし、Tのこと好きなのかな?」

理性はそう問いかける。


でも、

「やった~! このわたしについに、ついに!!! 彼氏が出来るぅぅ~!!」

感情のほうがいつも声が大きい。


結果、「付き合う!!」と即答した。

そしてついにわたしは彼氏持ちになった。


その答えを聞いたTは車を河原の草の生い茂ったところへ隠すように駐車した。

予想すらしていなかった展開とその展開の速さにわたしはストップをかけずにそのまま流された。


Tはキスをしてきた。

24歳にして初めてのキスだ。

わたしはTが好きだということよりも自分がこういうことをしているということに興奮した。

でもわたしは浅はかでどうしようもない面食いだから相手がTであることに申し分があるはずもなかった。

出会った人のほとんどが美形だと認めるこの男の中身がどうであれ、わたしはきっとこの人を受け入れたと思う。

そして実際に受け入れたのだ。この先、どれだけひどいことをされ続けても。

わたしはこのとき、そんな未来を思う余裕なんてなかった。

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