焦ったシンデレラ(これが恋かしら)
誰かと遊びに行くならわたしでいいじゃん!!
……とはいえず、「そうなんだ……じゃ、また」と返信したけど、Tはわたしがあきらかにがっかりしたと気づいたのか「また今度誘いますね! すみませんでした!」と謝ってきた。
そりゃそうだ、いくら痩せたとはいえ70キロ台のわたしと顔だけとはいえ、イケメン大学生がデートしたいわけはない。
また今度、なんて社交辞令信じるわけはない。
ほどなくして、地元の花火大会があった。
世間的にはまったく有名でもなんでもないけれど市内では大きなイベントで、周辺道路が交通渋滞になるほどには盛り上がる。
Tは花火が好きらしく、なんとわたしを誘ってきた。
「こないだの穴埋めに花火大会行きませんか?」
まったく期待していなかったのに社交辞令ではなかったみたいだ。
とはいえ、わたしは2つ返事でOKしたのだけれど、Tは「Kさんも誘いましょうか? ……でもそしたらこないだのお詫びにならないし……」とかグダグダ言っている。
その態度にやはりわたしと二人ででかけたいわけではないと思い知らされたけど、それでも結局は二人で行くという選択をしてくれたことはうれしかった。
花火大会は毎年けっこうな人出で、その年もやっぱり賑わっていた。
Tは人混みをよけながらサクサク歩いていくけれど、わたしは重い体重を支えるには心もとないサンダルで、なかなか追いつけなかった。
恋人同士なら手をつないだり、彼の服の端を持ったりしてはぐれないようにできたかもしれないけれど、わたしは「待って(はぁと)」って彼に触れる勇気がなかった。
中学生の時のように「ばい菌!」「触るな!」と言われないとは思うけど……。
彼に追いついて、車に乗り込んだ後、わたしはお姉さんモードになって彼にお説教をした。
「もぉ。あの状況だったら女の子を気遣わなくちゃダメじゃん」
「すいません」
「手をつなぐとかさぁ」
わたしはふざけて怒った振りをしたけど、Tは反省しているのか、わたしをめんどくせぇ女と思っているかはわからなかった。
「そんなんじゃせっかくかっこいい顔してるのに女の子にもてないよ!」
「銀河さんてホント、俺のことかっこいい、かっこいいっていいますよね?」
「うん、……だってかっこいいもん」
そしてTは運転しながらわたしのほうを見もしないで言った。
「そんなに俺のこと好きなら付き合います?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます