第26話 幕間
「予想以上に寝ぼけてるな…。ここまで朝弱くて、現役時代大丈夫だったのか。」
土曜の普通列車、空席の目立つ電車に乗って、席に着いた途端に
「ゴメン、無理、寝る。」
と、小さく謝って、寝息を立て始めたつぐを見守りながら俺はついつぶやく。
でも、助かった。
平常時のつぐなら俺の企みに気づいただろうし、気づいた時点で帰ろうとしていただろう。それを留めるのは、相当な労力を使う。
「ほんと、なんで俺こいつのために頑張ってるんだろ…。」
俺の横で警戒心ゼロで眠るつぐの頭を自分の肩のほうに引き寄せる。このままじゃ椅子から滑り落ちて生きそうだ。
つぐ、お前はきっと今から行く場所に行ったら烈火のごとく怒るのだろう。目が覚めて、気づいた時点で抵抗を重ねるのだろう。
それでも、俺はお前をその場所に連れて行かなきゃいけないと思うんだ。いろいろな奴らが俺につぐを連れてきてくれと、頼みに来たからじゃない。ただ、俺の意思で。
そのための言い訳には俺がなってやる。盾にもなってやる。
お前が一人でそこに取り残されないように。
俺が待ってるから。
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