第14話
「つぐな。捕まえた。」
昨日の浮かれた気分のままだったせいだろうか。面倒なことになってしまった。
「…なんすか?今日も病院なんすけど。」
不機嫌を隠さず、私は田山先生に告げる。
「今日の朝優里がお前の弟に会ったらしいが、姉貴は今日は帰ってくると言っていたらしいぞ。」
…あのバカ。
「弟にも、優里にも全部言う義理はありませんから。」
「お前の言う、家庭の事情にも首をかしげていたらしいが。”うちは両親仲良く、僕たちを放任し、僕にも姉貴にも問題はありませんよ?金にもそんなに困ってませんし。”」
ほんとあいつなんでも話すな。亜哉が、優里のことを好きなのは勝手だが、人の芝居を壊さないでほしい。
「弟はまだ幼いですし、しつこいようですが、いくら近所でも家庭の事情全部優里に話しませんって。」
「お前の弟高校生だろ。年変わらねえっつーか年子だろ。幼くねえよ。ついでに言えば、お前がいくら時間稼ぎしても行野も進路指導だから来ないぞ。」
拓真が来るまで時間稼ぎしているのはばれていたらしい。小さく舌打ちをして、
「…やりすぎでは?」
「お前の賢しさにはそれくらいやらないと無理なことが分かったからな…。リン呼ぶから。」
「呼ぶのは勝手ですけど、リン呼んだら私は一言も口を開きませんよ。」
「…脅しのつもりか?」
田山先生の動きが止まる。
「まあ、リンが来なかったら喋るとも言っていませんが。」
「…話す気はないってことだな。」
「ハイ。」
田山先生は諦めたように動きを止める。
「綾乃に連絡したんだ。俺も、リンたちも。そうしたら、全員に返信が返ってきた。”もうつぐなをそっとしてやってください”俺のとこには頭まで下げにきた。」
「綾乃サンが…。」
「綾乃はすべて知ってるんだな。」
「ハイ。」
私は頷いた。
「でも、お前も綾乃も、言う気はないと。」
「ハイ。」
先生は頭をかき混ぜる。
「こっちに立場ってもんがあってな…。今のままじゃ、お前の退部届を受理するわけにはいかないんだ。っていうことはわかってくれるよな。」
「センセは真面目ですね。受け取ったって罪ではないでしょうに…苦労してますね。」
「…誰のせいだと。」
「私のせいですか?」
ため息をついて
「明らかにな。まあ、それはいい。でも、頼みの綱だった綾乃に頭を下げられては何も言えんからな。…つぐな。俺はお前が事情を話して、全員を納得させられるまでは受理しないぞ。」
「だから、家庭の事情だって言ってるのに…。」
「恨むなら弟を恨め。それが嫌なら、部活に来い。宙ぶらりんは嫌いだろ。」
「嫌いですよ。私も、みんなも。」
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