第51話 そういうこともある

 おいらは安土城の天主閣で鼻毛を抜いていた。煙草を吸うとすぐに鼻毛が伸びて困る。鼻毛を切るのは、こそばゆくて面倒くさい。だから思い切って抜いているのだ。「伸びるなら 抜いてしまおう 鼻毛共」の心境である。そこへ、藤吉郎がやってきた。

「上様、ランキングが一つ上がりましたぞ」

 で、あるか。

「もっと喜ばれないんですか?」

 だから言っているだろ。エッセイ・ノンフィクション部門はコンテストにみんな出ているから、過疎ってるんだよ。実力でランキングが上がっているわけではないんだ。心から喜べるか。

「そういうもんですかなあ。サルにはとんと分かりません」

 それより、コンテストに出した『狂気の夏』はどうした? 権六から連絡はないか?

「誠に遺憾ながら、苦戦しているようでございます。上杉景勝だけならともかく、全国から精鋭が集まり、そりゃあ、すごい★の数を稼いでいて、我が軍は太刀打ちできないようでございます」

 で、あるか。

「いっそこちらのエッセイを出品されたらいかがかと……」

 サル、この慮外者め。このエッセイが出版できると思うか? こんな色物、相手にされぬわ。出品しないからこそ、温かい目で見てもらえるのだ。ランキングにも入れてもらえるのだ。だいたい昨日は★一つ、入っておらぬではないか。この程度のエッセイで天下を取ろうなどと大それたことを言いおって。佐久間信盛のように追放してやろうか!

「ひえー、お許しを」

 藤吉郎は慌てて逃げ出した。


 けっ、サルめ愉快なやつだ。案外あのように陽気なやつが天下を獲るやもしれぬな。いや、最終的に天下を治めるのは徳川三河守かもしれん。では、おいらはどうなる。本能寺の変で死ぬはずが、大人の都合で生き残ってしまった。考えてみれば、おいらには希死念慮があった。いいチャンスを逃してしまった。人間、本当に死にそうになったら生きたいと本能が思ってしまうんだな。誠に情けない。潔く自害した本物の織田信長が羨ましい。おいらも頑張って、今夜あたり決行するか? まあ、その時の精神状態を鑑みて考えよう。


 明日、新エピソードがなかったら、決行したと思ってください。では、さようなら。 

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