読み進めるほど物語の世界観がしっかり頭に入ってくる文章は凄い! 話の展開とテンポも独特で、どんどんこの話に惹かれていく。
ラストで提出されるイメージが秀逸でした。「XXに足が掬われてしまいそうになる」など、XXの使い方も上手い。しかし、それにしてもアレを終焉のイメージに使うとは……。灯台もと暗しというか、それも含めて作者の力量なんでしょう。世界観もきっちり丁寧に作られていて、語りも淡々としていて、それら全てがラストと調和しています。派手なイベントはありません。しかし、いや、たがらこそなんでしょう、この作品の提示する「人間の本質的な無力さ」みたいなものに胸をつかれました。一度、読んでみてください。
ポストアポカリプスもの。様々な要因で一度世界は滅び、人々が移り住んだ地下が舞台の物語。その世界観を形作る設定がよく練られており、リアリティのあるSF作品となっていました。SF好きにはたまらない一作です。そしてクライマックスで地上に出るわけですが、そこには春樹だけが気づけた異変があった、という展開は、作品に引き込まれると同時に強いメッセージ性があり、とても読み応えのあるラストでした。読了後もいろいろと考えさせられる、そんな内容でした。個人的な好みの問題ですが、この設定の物語を是非とも長編作品として読みたかったなーと思いました。
「術式」の設定など緻密に設定された世界観や主人公の行動や想いが、ラストに至るまでに一気に雄弁になる瞬間。わずか16000字の中に、SFのダイナミクスが詰め込まれた秀逸な構成に脱帽しました。一度、終わりを迎えた世界だからこその理想郷、美しく整理された世界。読み終わった後、タイトルの「終焉」がなにを指すのか、改めて考えてしまいます。短編SFとしての、素晴らしい完成度にやられました。
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