珍しい食中毒

 今回は、お義母さまの話です。


 お義母さまは毎年、夏が近づくと庭にゴーヤを植えてすだれの代わりに育てます。ゴーヤってのは凄い繁殖力で、窓に立てかけたすだれ用のネットだけでなく、庭木がほとんどすべてコイツに侵略されて覆い尽くされてしまうのですが、まぁ、今回それは無関係です。


 で、毎年、大量のゴーヤがたわわに実るのですよね。それこそ毎年100個以上は確実に実ります。ゴーヤなんて沖縄名物ゴーヤチャンプルくらいしか料理法知りませんよ。毎年、毎年、ゴーヤの処分に四苦八苦するわけです。


 最初の頃はヘビーローテでゴーヤチャンプル食べました。週に三回ペースで。地獄です。そのうち、お義母さまがどっかで別の料理法を聞き込んできまして、酢もみが加わりました。これがお義母さま的に便秘にヒットしたらしく、せっせと消費してくださるようになりまして、家族の負担はいきおい減る事となりました。


 他には、カレーの具材に少し入れたり、天ぷらにして食べたりしまして。カレーは大不評でしたが、天ぷらはヒットでした。ただ天ぷらにするんじゃなくて、ホットケーキミックスを緩めに溶いて、フリッターにすると美味しく食べられる事を発見したのです。


 妙に苦味が増しまして、甘口のお好み焼きソースをたっぷりとつけて食べるんですが、それでもかなり苦いです。けれど不思議なことに、多少、食欲が減退していてもこの天ぷらを二つほど食べた後なら、脂っこいはずの他の天ぷらも食べられてしまうのですよね。鳥のから揚げとセットにすると、お年寄りでもぱくぱく食べてくれます。


 お義母さまとゴーヤとの戦いはかれこれ10年に及びます。いかにして消費するか、無駄なく、出来ればご近所に撒くことを回避しつつ、どう食べ尽くしてしまうかの工夫に毎年悩まされます。もらい物で頂くゴーヤってたぶん微妙でしょうから、ご近所付き合いを考えるとあんまりばら撒けないという判断です。


 今年はついに、ゴーヤ生絞りジュースまでが登場しました。お義母さまとお義父さまは歴戦の勇士です、十年来のベテランとなればゴーヤを絞って飲むという一見暴挙とすら思える戦法ですら、使いこなせるわけなのです。牛乳をベースにした、グリーンスムージーですね、凶悪です。


 ただ、今年開発したこの生ゴーヤジュースは失敗でした。


 お義母さま、何を思ったのか種までまとめてミキサーにかけて粉みじんにしたのです。そうして読者の予想を裏切ることなく、救急車で運ばれました……。


 救急病院でドクターが、懸命にネット検索をかけてくださったものの、食中毒になった原因の特定は不可能。思い当たるのは『ゴーヤの種』だけです。


 ゴーヤの種に毒性があるかないかなど、誰も調べたことがなかったわけですね、きっとね。まさかゴーヤの種を食べる人が居るなんて思われなかったんですね、きっとね。


 ゴーヤの種を原因(おそらく)とする食中毒、その症状は嘔吐・下痢・眩暈・体温低下、だったようです。今後、研究されるかも知れません。誰かが知らずにゴーヤの種を食べたらことですからね。


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