第159回『水色の散歩道』→落選

 N社が大層美しい遊歩道を寄贈したということで、その記者会見に出席した。

「今回、弊社がS市に施設したのは空色の散歩道です。絶景で有名なウユニ塩湖のような体験をお楽しみいただけます」

 ほお、それはすごい。一体どんな散歩道なのか。

「それを可能にしたのは弊社のミラーシート技術です。全長五キロに及ぶ歩道に取り付けました」

 ミラーシートだって?

 すると女性記者が質問する。

「あのう、それってスカートの中も丸見えってことですか?」

「それにはご心配なく。歩道は凸面となっており下着が凝視されることはありません。また弊社の技術力をしても傷には勝てず、鏡としての性能はすぐに劣化します」

 ため息に包まれる会場。一体どの部分に落胆したのか。

「しかし散歩道の本領発揮はここからです。注目は雨上がり。ウユニ塩湖の輝きを取り戻すのです」

 ほお、雨上がりが見頃とはなんとも一興な。

「なぜS市が選ばれたのですか?」

「天空率の高いS市の地理が適していたからです」

 確かにこれは重要だ。

 しかし真の意味を知るのは後日、飛行機で上空を通過した時だった。

「これがやりたかったのか……」

 S市の街並みの中でキラキラと輝いていたのは巨大なN社のロゴだった。

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