第155回『投網観光開発』→落選

 小さな漁村、茨北村に若者が押し寄せるようになったのは一週間前のこと。困惑した漁師達が派出所に押しかけた。

「最近なんで若者が村に来るのか教えてくんねえか?」

「ちょっと待って下さい……」

 赴任したばかりの新人巡査はスマホで調べ始める。

「どうやら、ポキモンVRというゲームが原因らしいですね」

 巡査が示す画面には一軒の漁具店が紹介されていた。

「それ、俺の店だっぺ」

「魚吉の網がすごい、って書いてありますよ」

「そのゲームと網が関係あんのけ?」

「えーと、魚吉の網は使い易くて大きなポキモンが獲れる? へぇ〜、ポキモンを捕まえる道具は、実物の写真を三方向から撮らないといけないらしいですね」

「写真を? 道理で若者が店に来て、網の前で何かやってるわけだ」

「魚吉の網を使ってみた動画も載ってますよ」

 そこには公園で大きなゴーグルを付けて腕を振る若者達の姿が。

「なんだい、こりゃ随分と屁っ放り腰だなぁ」

「網の打ち方、教えてあげたらいいんじゃないですか? 一時間千円くらいで」

「おお、それはいい案だっぺ」

「んだ、皆でやっぺよ」

 こうして茨北村は世界でも有名な漁村となった。投網の魅力に取り憑かれて永住を決めた外国人もいるという。

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