第118回『消臭効果』→落選

「あっ、あれってカレイチョウじゃね?」

 誰かが叫んだ。その先にはオレンジ色のみすぼらしい蝶が舞っている。

「やだぁ、こっちに来ないで」

 その名のごとく、枯れたイチョウの葉のような風貌の蝶。飛んで行く先を避けるように、通行人達は逃げ去った。

 加齢蝶。

 いつしか街で繁殖し始めたその蝶は、加齢臭の強い人に集まる習性を持っている。そんな調査結果が発表されると、たちまち人々に嫌がられる存在となった。

「ちぇっ、今日もこっちに来なかったか……」

 蝶のおかげで我が社の臭い消しはバカ売れしたが、加齢臭を餌にしている蝶は最近その数が減って困っている。俺は会社の命令で、加齢臭エキスを全身に振りかけて蝶の餌やりをしているのだ。

「どのような成分にしたら蝶が集まってくるのだろう?」

 今日も俺は、エキスの配合を試行錯誤しながらイチョウのようなひらひらを探して街を歩いている。

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