母の悲鳴

 孤独な静寂と戦い続けていた耳に、大きな鉄の何かが落ちる音がしてキトリは目を見開いた。製鉄場に、誰か居る。心臓が高鳴る。何だ。誰だ。何が起こっている。抑えきれない嫌な予感を、自分の身を握り締める事で我慢した。

 

『ははははははは! レーダーの精度を・・・・・・・・・いか!? 我が・・・開発したレーダーには、貴様の家の、こ・・・・・・・・・・・・・・・・・・応が映っているのだ!! 見・・・・な、男・・・』

 見知らぬ声が響いてきた。やっぱり誰か居る! お父さんでもお母さんでもない誰かが此処に居る…! 緊張がキトリの胸を幾度も刺し貫く。何が起こっているのか知りたい衝動と、恐怖の絶頂が交錯する。何も考えられない。何も考えたくない!!! 頭を抱えて耳を塞いだキトリに、今度は聞きなれた者の聞きなれない声が凄まじい勢いで貫通した。

 

『あぁぁあああぁあああぁああ!!!!』

 一度きりだった。また何も聞こえなくなった。たった、たった一度だけ

 

 

 

 お母さんの、悲鳴……!

 

 

 

 キトリは立ち上がった。ドサドサと崩れ落ちるゴミの山の音などもう気にしていられなかった。ガクガクと震える両足のせいで、満足に歩く事すらできなかった。なんとかしてシャッターの前まで這うようにして着いたキトリは、角にあったネズミが通るような小さな穴から製鉄場の様子をのぞきこんだ。

 焦げた褐色の灯りに照らされた銀色の剣。それを手にする大柄の男と刃の先端にから落ちる紅。その刃の先に、二人の愛すべき者達が蹲っているのが見えた。抱きかかえているのは…お父さんだ…だとすルなら………斬らレたノハ………

 

 ビビッ。

 キトリの左手をぐるぐる巻きに包んでいていた包帯が、ゆっくりと裂ける音がした。それはキトリの右手が包帯を掴んでいたからではなく、キトリの左手そのものが、肥大化したかのように見えた

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