魔王を倒せば
夢人
終わり
勇者は宿敵である魔王を倒しました。
魔王が倒され、世界は平和に......なったのでしょうか。人間たちは連合軍を築き魔者どもが魔王軍と戦いました。そんな中で勇者と勇者の仲間たちが敵の首領である魔王を倒したのです。
魔王が倒されたばかりの頃は、魔王軍側は混乱。人間側は歓喜に満ちあふれていました。
しかし、それらが収束するにつれて、おかしなことになっていきました。人間の国々がこぞって魔王が支配していた土地を侵略し始めたのです。当然、国を侵略すると争いが起きます。魔王を倒したことで人間たちは勢い付いていました。侵略された土地に住んでいた人達はどうなってしまったのでしょう。
その答えは、殺されるか、捕まって奴隷となって売られるかです。魔者といえども人間と大きな変わりはありません。オスもいればメスもいます。老人もいれば子供もいます。容姿も角が生えていたりといった身体的特徴があるだけで、他はなんら変わりません。
そのため魔者の土地では、反抗的な者や老人は殺され、男は労働力として奴隷に。女は慰みものとして扱われ、子供は貴族の玩具や研究者たちの実験用として奴隷にされました。
そして人間の国々は魔者の土地を全て征服してしまいました。
人々は征服した土地を耕し、国はとても豊かになりました。しばらくの間、人々はその幸福を享受したのです。
人間は欲深い生き物です。
その土地を征服し、国が豊かになることに味をしめた人間達は、今度は互いの国を侵略し始めたのです。
人々は争いに明け暮れました。
魔王を倒し、世界が平和になったと思っていたかつての勇者はそんな状況に絶望しました。
魔王さえ倒してしまったら、これから先魔王軍との戦いで人間が傷付き、死ぬこともなくなる。世界は争いのない平和なものとなると信じていたからです。
しかし、現実は魔王が死んでなお争いの絶えない世界。
せめて人間同士が傷付け合うことのない世界にしたかった。これならばまだ、魔王が生き、魔者対人間である方がよかった。
人間は欲深い。余計な欲が争いを招くのだ。魔者は仲間意識が強く、互いを犯すようなことはない。
だから世界に、そして人間に絶望した勇者は願ったのです。
......魔王の復活を......
魔王を倒せば 夢人 @mujin
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