オレ彼!?★ 融(とおる)の章 晩御飯

塾から帰ると、

母親が、出かける支度をしていた。


「融、お帰り。」


「今からどこにいく?」


「訪問介護先のおばあちゃんが、

いつの間にか、

徘徊しちゃったって!!

そういえば、

融の塾の近くだけど、

白髪の95歳のおばあちゃん、

見なかった?

足腰は健在だから、

ボケちゃっても、

徘徊しちゃうのよ~!!」


「婆さんなんか見ねーよ。」


絢香ちゃんしか見てねーし……。


「そう……。」


母さんの携帯の着メロが鳴る!!


「あ!

帰ってきたって!!

良かった~!!」


「人騒がせな婆さんだな~。」




オレは、親父とオレの分が並べてある晩御飯を

一人で食べながら言った。


母さんは、オレの塾の費用を稼ぐため、

訪問介護の仕事に復帰している。


痴呆老人か~。

介護が大変だって言うな……。


「もしもし、あ、醍醐寺さん、

おばあちゃん帰ってらしたの?

良かった~。」


醍醐寺……さん!?


「え?」


今、醍醐寺さんって言った?


「醍醐寺さんのおばあちゃん、

自分で帰って来たんだって♪」


母さんは、独り言のように、

勝手に話はじめた。


「へ~。

醍醐寺さんって、

珍しい名前だね。」


珍しくオレが返事したら、

母さんは、嬉しそうに話はじめた。


「そうなのよ~。

あの寺町の、

お屋敷跡地に、

出来たマンションの方なんだけど、

あのお屋敷に住んでいた方だって、

聞いたわ!!」


「ほ~。」


醍醐寺 絢香ちゃんの親戚かね?

その婆さん。





「ただいま。」


「あら、アナタ、

お帰りなさい。」


親父が帰ってきた。


「寺町のお屋敷って、

どうした?」


「あ、醍醐寺 遙華(はるか)さんっておばあちゃん、

私の仕事で、

訪問介護に、

行ってるんだけど、

さっき徘徊しちゃったって、

でも帰ってきたって!!」


「寺町のお屋敷って、

ずっと空き地だろ?」


「マンションが建ってるのよ!

新築の!!」


「あそこ、昔、火事で焼けたろ?

親父が言うには、

爺ちゃんが若い時分に、

お屋敷のお嬢様に、

つけ文したとかなんとか……。

でも、火事で亡くなったんだって言ってた。」


親父も、母さんが温めなおした晩御飯を

オレの隣で、

食べはじめた。


祖父の父親、

曾祖父が、

つけ文?


「つけ文って何だそれ?」


「手紙で告白する、

恋文って所かな?」


恋文……ラブレターかな?


「お嬢様亡くなったんじゃね~?」


遙華婆さん生きてるじゃん!!


「遙華おばあちゃんは、

違うわ、

亡くなったお姉さまが、

いらしたそうよ!」


「ごちそうさん!!」


オレは、早くメール打ちたかった。

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