口べらし★ 第1話 旅館の夕食
「ごちそうさま〜(^_^;)」
紗裕(さゆ)は、
旅館の晩御飯を
半分ほど残した。
「紗裕、
まだ残っとるじゃねぇ〜か?」
普段優しいおじいちゃんが、
怖い顔をした。
「おじいちゃん……?」
紗裕はちょっとびっくりした。
「残さず食べな!」
「……うん……。」
ダイエットしてるのに……(T_T)
しぶしぶ紗裕は箸を取った。
従兄弟の将義(まさよし)くんも、
慌てて食べ始めた。
「私たちが紗裕ちゃん達くらいな時は、
食べたくても、
食べられ無かったのよ!」
おばあちゃんまで……そんなコトを(^_^;)
普段離れて暮らしているおじいちゃんとおばあちゃんと、
おじいちゃん達と一緒に暮らしている従兄弟の将義くんも、
一緒に家族旅行に来ているから、
色々ねだると、
可愛い孫の私達におじいちゃん達は、
財布の紐がゆるむ♪
旅行の間だけ、
ガマンかな?
「おじいちゃんが子どもの頃に聞いた話しだ……。」
おもむろに、おじいちゃんが、
語り始めた。
仕方なく聞いた。
「昔、食うに困った家族がいた。
一番上の兄は、身体が弱く、
いつも寝ていて働けない。
姉はよそに奉公に出ていた。
二番目の兄がある日、
一番下の弟と裏の雪山に出かけた。
お腹空いて何もないから、
何か食べられる物を探しに行っていたのだ。」
「近くにコンビニも何も無いの?」
「コンビニが出来たのは、お父さんお母さんが子どもの時分だ!
店で買うお金も無かった……。」
紗裕はいやいや食べていた魚の塩焼きを
ごくりと飲み込んだ。
「一番下の弟は、ひもじくて、
疲れたと二番目の兄に訴えた。
じゃあ、雪の穴掘って休むって事になった。」
「しばらく雪の穴で、
二人は休んだ。
下の弟は、疲れたから、
そのまままうとうと眠ってしまった。」
「雪の寒い中、
寝たらマズイんでは?」
将義くんが突っ込んだ!
「そうだ!
二番目の兄は、
弟を穴の中に雪を入れて埋めた。」
「えっ!」
皆が声を揃えて驚いた。
「雪深い国で、
食い物に困った時に、
口べらしするという、
こういう悲劇は、
けっこうあったのだ……。
奉公に出したり、
年端のいかない小さな子どもは、
まだまだ奉公にゃ、
出せない事もある。」
バサ……バサバサバサ!
「きゃっ!」
「雪が木かなんかから落ちたんだろ。」
紗裕達は、
頑張って食べた。
「おじいちゃん、
奉公って?」
「商家の下働きする女中見習いとか……色々だな。
紗裕ちゃんや将義ぐらいの子どもが、
もう奉公に出ていたって事だ!」
「ふ〜ん……。」
お父さん、
お母さんと離れてお仕事するって、
信じらんない。
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