第30話
*
「あっ!」
一瞬にして、その場の風景は変わっていた。
あたりを見渡すと、懐かしさに胸が熱くなり、俺は溢れそうになる涙を懸命に堪えた。
それは、俺の育った町だった。
座標はあらかじめ調べておいたつもりだったが、やはり多少のずれがあったようだ。
俺が本当に行きたかったのは、もう少し先…
あの老人に出会う前の場所だった。
先回りをして老人を別の場所に移し、俺と出会わないようにすればそれですべてうまくいく。
そう考えたのだ。
だが、ここからあの場所へはそれほど遠くもないから、追っ手にみつかる前になんとか出来るだろう。
すぐに向かおうと歩き出し…俺は、不意に立ち止まる。
家の様子を少しだけのぞいてみたくなったのだ。
ほんの数分で済む事だ。
母さんや弟が元気でいるかどうかだけを一目だけ…
そう思うだけで、また胸が熱くなった。
十五の時に家を離れて以来、結局、二人に会うことはなかった。
家の傍に着いた俺は、茂みに身をひそめる。
その瞬間、目の前の光景に俺は身体が震えるのを感じた。
息が苦しい…
(な…なぜだ……!?)
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