第30話




「あっ!」




一瞬にして、その場の風景は変わっていた。

あたりを見渡すと、懐かしさに胸が熱くなり、俺は溢れそうになる涙を懸命に堪えた。




それは、俺の育った町だった。

座標はあらかじめ調べておいたつもりだったが、やはり多少のずれがあったようだ。

俺が本当に行きたかったのは、もう少し先…

あの老人に出会う前の場所だった。

先回りをして老人を別の場所に移し、俺と出会わないようにすればそれですべてうまくいく。

そう考えたのだ。

だが、ここからあの場所へはそれほど遠くもないから、追っ手にみつかる前になんとか出来るだろう。




すぐに向かおうと歩き出し…俺は、不意に立ち止まる。

家の様子を少しだけのぞいてみたくなったのだ。

ほんの数分で済む事だ。

母さんや弟が元気でいるかどうかだけを一目だけ…




そう思うだけで、また胸が熱くなった。

十五の時に家を離れて以来、結局、二人に会うことはなかった。




家の傍に着いた俺は、茂みに身をひそめる。

その瞬間、目の前の光景に俺は身体が震えるのを感じた。

息が苦しい…




(な…なぜだ……!?)


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