第29話

「そういうことだ。」


「これは何なんだ?」


「これは持ち主を限定するものだ。

ここに親指を押し付けることで本人確認をする。

それをしないことには、この装置は作動しない。」


「なるほどな…」


「じゃあ……」


おそらくディッキーは金をくれと言いたかったのだろう。

しかし、奴はその言葉を言うことが出来なかった。

俺が装置を奪い、奴の心臓にビームを撃ちこんたからだ。




とても呆気ないものだった。

余程油断していたのか、奴は抵抗もせず、声さえ上げずに絶命した。

ディッキーが死んだことにまだ実感はなく、奴の身体からゆっくりと流れ出した赤黒い血を見ても俺はまだどこか夢を見ているような気分だった。




「すまないな。

俺には、どうしてもやらなきゃならないことがあるんだ。」




俺はディッキーの親指を装置の片隅に押しつけた。

高い電子音が短く鳴り、ディスプレイに明かりが灯る。

俺は、座標の数字を打ち込んでいく。

興奮のため、手が小刻みに震える。

今度こそ失敗出来ないというプレッシャーは、思ったよりも大きなものだ。

慌てるな…ゆっくりとだ…

自分にそう言い聞かせていた時、騒がしい若い男女の声が聞こえた。

こんな所に一体誰が……!?


すぐ傍に、十代とおぼしき派手な身なりの男女数人の姿が見えた。

不良共がここを遊び場にしているのか!?




俺の足元にはディッキーの死体が転がっている。

俺は焦って数字を打ちこみ、移動ボタンを押しこんだ。


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