第19話 ヒラタクワガタ
ヒラタクワガタ(Dorcus titanus)。
コウチュウ目・クワガタムシ科・オオクワガタ属・ヒラタクワガタ亜属の1種。オオクワガタ属の中で最大種。
体長はオスが18.8~111mm、メスが21~54.5mm。
名前の通り平べったい。
オスの大アゴは太く、平べったく、根本にある大きな内歯が一対と、ノコギリ状の小歯を持つ。小型個体では小歯が消失していることもある。
挟む力がとにかく強い!
体色は黒、少し赤みがかったのもいる。羽はツヤがあり、脚は短い。1~3年生きる。動きはまぁまぁ鈍い。
※一部ウィキペディアより引用。
以上の説明からも分かるように、大きくて立派なクワガタだ。
天然のオオクワガタは、今ではほとんど取れなくなったと聞くが、ヒラタならなんとか頑張れば取れる。まぁ、大きいのはホントに少ないが。
力が強く、カッコイイ!
森の王者で子供達にも大人気。
今回はそんなヒラタクワガタのお話。
只今夏休み。
もう1時かぁ…ボチボチ寝るかな。
横になったはいいが、蒸し暑過ぎ。
とてもじゃないけど眠れる室温じゃない。
喉が乾燥するのが嫌で、なるべくエアコンは使わないのだが、観念してスイッチを入れることにした。
喉が渇いたので、部屋が冷えるのを待つ間、近所の自販機にジュースを買いに行くことにする。
近所の酒屋の自販機コーナーにて。
その周辺だけが、ひときわ明るく照らし出されている。
ポケットから小銭を取り出し投入。
ボタンを押し、出てきたジュースを取り出すためにしゃがみこむ。
その時、なぜか隣にあるゴミ入れの方に視線が吸い寄せられる。
?
灯りに照らし出される黒い「それ」。
缶を回収するときに零れたのであろうジュースを舐めていた。
ヒラタクワガタ。
しかもかなりデカい。7cmくらいある。
多分、小学校の頃の自分なら、さぞかし狂喜乱舞していたに違いない。
しかしもう高校生。
クワガタムシなんか興味…おもいっきしときめくユキ。
流石にここまでデカいと捕獲するしかないでしょ!
思わず連れて帰りました。
真夜中なのに納屋から虫かごを引っ張り出す。
昆虫マットと止まり木とエサがない。
そのまま虫かごに入れると、ひっくり返った時起きあがれずに死んでしまう。
昆虫マットの代用品として、ティッシュを下に敷き、ひっくり返っても起き上がれるよう、庭木の枝を折って入れた。
次の日、近所のホームセンター兼スーパーにて。
いつもはついていかないくせに、あえて母親の買い物に付き合う。
どさくさまぎれに昆虫マットと止まり木と昆虫ゼリーを買い物かごへとぶち込んだ。
帰って虫かごの用意。
昆虫マットを敷き、止まり木を埋める。
ゼリーの蓋を開け、それを設置する木の台にセットする。
虫の住環境が整った。
ふと思う。
メスがいた方がよいのでは?
男(オス)の一人暮らし。
一人じゃ絶対ムラムラしているはず。
彼女ができて他人?の気持ちが分かってきたユキ。
しかし、わざわざ命を懸けてまで虫取りには行きたくない。
スズメバチはいるし、蛇もいる。ムカデも見たことあるし、蚊には刺されまくる。
子供の頃は知らなかったというか、あえて目を瞑っていた毒虫たち。そんなやつらの餌食にはなりたくない。
本格的な虫取りは諦めた。
他の方法を考える。
そうだ!
いいことを思いつく。
庭木の中にドングリが数本ある。
シロスジカミキリが住んでいて樹液が出ている。
小学校時代はその木でクワガタやカブトムシを捕まえたことがあった。
あれから4年。
まだ樹液は出ている。
ちょっと期待する。
スズメバチは?
今はいない。
少し離れたところからじっくり凝視。
黒い虫が数匹いる。
キマワリとヨツボシケシキスイと…あれは!
近寄ると落ちた。
木の下を見る。
いた!
コクワガタのオス。
ゲットした。
ヒラタと一緒の虫かごに入れると噛み殺されるので別のを用意。
虫捕り。
高校生になっても結構面白いじゃないか!
近寄って木の穴を見る。
割れ目の中にはクワガタ。
枝を折ってほじくり出す。
これもコクワ。
オスとメスが出てきた。
もう一つの虫かごの住人の方が増えてきた。
穴の中にはもういない。
家に入り、虫かごの用意。
さっき捕ったクワガタを入れ眺める。
いざ飼ってみると、小学校の時のワクワクが甦ってくる。
自慢したくなって千尋と海と大気に写メ。
みんなからは「いーね!」と返信。
千尋は暇だったらしく、写メ後ちょっとしたら家に来た。
一緒に眺める。
「いーね。」
と千尋。
「そやろ。」
とユキ。
「オレも見っけたら飼お。虫かごまだあるし。」
「それがいーばい。」
ジュースを飲みながら、時が経つのも忘れ虫かごの前で二人並び観察している。
しばらく観察していると、
「ユ~キ~く~ん。」
勝手口から桃代の声。
「な~ん?」
「遊び来たよぉ~。」
「上がりぃ。」
「は~い。」
「お!千尋くんきちょったん。」
「うん。ユキからクワガタ捕まえたっち写メきたき、懐かしくなって見に来た。」
「どれ?」
「ぅお~!でったんデケーやん!出してみてもいい?」
田舎者の女子は虫が大丈夫な子が結構いる。
「いーばってん、噛まれんごとしちょかなばい。」
「分かっちょー。ヒラタっち食いつかれたらでったんイテーんよね。」
分かってらっしゃる。
そして虫かごの蓋を開け、手を伸ばす。
もう既に嫌な予感しかしない。
迫ってきた手にノコギリクワガタ並みの俊敏さで反応し、
「いって~~~!」
お約束のよーに人差指を挟まれる。
ユキが両手の人差し指と親指で大あごを摘まみ、力ずくでこじ開ける。
強い。
流石72mmは伊達じゃない!
桃代はあまりの痛さに歯を食いしばって耐えている。
「イッテ~。はよ…離して!」
「ちょー待って!でったん強い。」
離そうとして力を入れれば、それに対抗してさらに大あごに力を入れる。
「イテ~!コイツでったん力入れよぉき!」
挟まれた先の血色が悪くなってきた。
再度チャレンジ。
段々虫も疲れてきて…やっとこじ開けることに成功。
「今!」
指を引き抜く。
桃代の右人差し指には大あごの跡がくっきり残っていた。
「あ~、イテかった。」
指をふーふーしている。
「大丈夫?こいつ思ったより速いね。」
「うん。あ~ビックリした。何年ぶりよ、クワガタに食いつかれるの。でたん痛かったし。」
ありがちなハプニングだけど、高校にもなってこんな目に遭うとか思いもしなかった。
ユキの持ってきた消毒液を塗っている。
そして後日。
やっぱし菜桜たちに言いふらかす。
バ~カ。
と言われた。
夜、部屋でボーっとするユキ。
重低音の羽音がし、何かが網戸にとまる。
見てみると大きなカミキリムシ。
近づいてよく見てみる。
黄土色のボディに長い触角。他のカミキリとは違い前方を向く大アゴ。
ミヤマカミキリだ。
網戸を開け捕まえた。
しばし観察。
ギーギー音を出している。
飼ってみよっかな?
虫かごを用意しようと思い諦めた。
カミキリムシは飼うのが難しいのだ。
生木を食うからエサの調達が面倒で、虫かごで飼ってもすぐに弱って死んでしまう。
観察も終わったので、網戸を開けて逃がしてあげた。
小学校以来、網戸の羽音に興味を持たなくなっていた。
そういえば、毎年何回かは今みたいな羽音がしていたように思う。
せっかくまた興味を持てたんだ。
少し注意して観察してみようと思った。
雨。
降り出して間もない。
川はここ数日晴天続きで水位がだいぶ下がっていた。
夏の雨はプラスの条件の一つだが、まだ増水するほどではない。
そこで考えたのがお部屋デート。
今日はマッタリしよう。
という訳でユキの部屋。
桃代を待っている間、クワガタを弄る。
ヒラタクワガタはいつも昆虫マットの中に潜っている。
虫かごの蓋を開け、挟まれないように割り箸でほじくりだし、掌に乗せてマジマジと眺めていた。
じっとして、前足だけに力を入れ、頭を上げたカッコ。
上から。横から。ちょっと下から。
色んな角度から眺め、
ん~、カッコイイ!
只今絶賛感動中。
と、クワガタが動き出す。
一瞬速く動いて、掌からコロリと落ちる。
咄嗟に手が出て、あろうことか、チ●ポの上で押さえつけてしまう。
暑いので、ユキのカッコはシャツ一丁、トランクス一丁。
はい。もうオチは、分かったね?
そう!正解!!
力の限りチン●の真ん中あたりを挟まれ、あまりの激痛にうずくまる。
「あ゛~~~~っ!」
流石72mm!挟む力はハンパない!
激痛で苦しむ。
そこに桃代到着。
ユキの様子がおかしい。
部屋の中から時折うめき声。
心配になる。
「ユキくん?開けるよ?」
返事がない。
もしかしてなんか酷い病気?
心配が頂点に達し、思わずドアを開けた。
「ユキくん!」
ユキがうずくまって苦しんでいる。
駆け寄って、
「どげしたん?どこが痛いん?」
ユキが体勢を変える。
「ちょ…これ…あ~~~!」
クワガタがパンツの上からチ●ポにガッツリ食らいついていた。
大変!ユキくんの大事なモノが!
当然、桃代にとっても大事だ。
起たなくなったらどげんしよ!
焦りに焦って大あごを摘まみ、こじ開ける。
強い!
このままじゃ、えっちできんくなる!
絶体絶命のピンチ。
早く何とかしなくては。
フルパワーでこじ開け、やっと取れた。
クワガタをほたり投げる。
そして、
「もぉ!なんしよったらこげなとこ挟まれるんよ!」
怒られた。
「ありがと。あ~、でったん痛かったき。死ぬかと思った。手に乗せて色んな角度で眺めよったら急に動きだして、ポロッち落ちて…咄嗟に押さえたもんやき食いつかれた。」
「ビックリしたっちゃきね!苦しい声しよったき、激しい病気かなんかっち思ったやん。」
涙目になっている。
「ごめんね。」
「ごめんねじゃないよ!チ●コ起たんごとなったらどげするん?」
かなりご立腹だ。
っつーか、悪いのオレ?
でも、
「ホントごめん。」
とりあえず手を合わせて謝る。
すると、少し怒った顔で、
「確かめる!」
「は?何を?」
「ちゃんと起つか確かめる!」
気が気じゃない。
「今から?」
まぁ、食いつかれんでも、あとでするつもりやったけどね。
「当たり前て!出して!はよ!」
「…分かった。」
素直に、
出す。
咥え、
上下し、
舌で刺激する。
ちゃんと機能した。
脈打ちながら臨戦態勢になった。
挟まれたところに線状の痕と、内歯の痕が2個ついて、少し血がにじんでいる。
「よかったぁ…。」
本気で心配している。
「起ったのはいいけど…この後どげするん?今のでオレ、したくなったよ。」
「…する。」
恥ずかしがりながら俯いて、すぐにし始める。
終わる。
機能的には問題なかったので一安心。
そして、
「もう心配させんでよ。」
「ん。ごめんね。」
優しく抱きしめ、そっと口づけた。
次の日。
雨は小康状態。
近所の水門へ。
ユキは6.5インチカットテールノーシンカー。
桃代はスピナーベイト。
桃代は水門からの澄んだ水と、本流のコーヒー牛乳みたいな色の水の境界を狙っている。
ユキは落ち込みに流れてきたミミズを演出している。
先にヒットしたのは桃代。
流れを計算し、少し上流に投げる。
濁った水にスピナーベイトを投げ込み、境界面をできるだけ長い時間かけて通す。
扇形に狙い、引いてきた数投目。
濁りから澄んだ側にルアーが出た瞬間、サオ先がひったくられた。
強い!
流れに乗って逃げようとしている。
途中からクルクルして抵抗する力が弱くなる。
「あれ?」
「どした?」
「多分ナマズ。回りよる。」
リールを強引に巻いてくると、40cmほどのナマズだった。
ナマズはスピナーベイト大好き。雨の濁りが入った時、よく釣れる。
顔なじみのゲスト様だ。
ファイト中、糸に絡みついて外そうとすることがある。それが「回りよる」感覚となってサオに表れる。
「顔、可愛いね。」
「そーね。」
「顔、ア~ップ。」
全体が入るように写真撮った後はケータイを近づけて、円らな瞳が確認できるように写す。
そしてフックを外す。
「ワームに来たらハリグニャグニャに曲がるよね。」
「うん。口硬いもんね。」
「さ、逃がそ。バイバイ。またね。」
身体を波打たせ、深場に消えていった。
「もーちょいいっぱい釣れたらナマズも楽しいよね。」
「うん。今ナマズ釣り流行っとるらしいよ。」
「へ~。そぉなんて。知らんやった。まあまあ強いきフツーにオモシレーよね。」
「うん。オレもナマズ好きよ。口ん中から内臓げなんと出てくるのはちょっとグロいけど。」
「あ~。なんかピンク色の出てきちょー時あるね。ウチもあれはイヤ。」
ナマズ談議に花が咲いている。
そしてさらに桃代。
さっきと同じパターン。
「今度はバス!」
エラ洗いして姿が見えた。
40cmは余裕である。
流れに乗って川を下る。
ミリオネアの105だからドラグは4kg。それに使用設定以上の16ポンドナイロンを巻いている。
ドラグが出る。
「つえ~!糸が出る出る。」
サオを立てて耐えている。流心から外れた瞬間を狙い、一気に巻き寄せる。
「ふぇ~。リョウガと違って巻く力、弱っ!ハンドルが短いき大変ばい。」
ドラグを滑らせながら巻き取っている。
やっと足元まで寄せて引きずり上げた。
「この子、アフター回復系やね。お腹だいぶん膨れちょー。」
「ホントやね。尻尾もだいぶん元通り。」
いつもの如く写真を撮って、測って逃がす。
「ありがと。バイバイ。」
元気よく流れの中に戻っていく。
次はユキの番なんだけど、気負うと釣れない。
水門から出た流れに何度となくワームを流し、流れてきたミミズを演出する。
と、黒い何かが流れてきた。
虫だ。
反転流に乗り、淀みに落ち着いた。
拾い上げてみる。
!!
ヤツのお嫁さんだ。
水に落ちたけど、幸いなことに元気である。
黒いボディにつやつやの羽根。
がっしりした35mmのヒラタクワガタのメス。
持って帰ろう。
とりあえずタックルボックスに入れて釣り続行。
ワームをチェンジ。
桃代が巻きで釣ったから早い動きのでいってみよう。
サワムラのワンナップシャッド4インチ。
テールを小刻みに震わせながらロールする。
なかなかの泳ぎ上手。
操作性をよくするために1.8gのスプリットショットをフックの前に着ける。
そして、ダイレクトに落ち込みへ打ち込む。落ち込む水流に揉まれ深みへ。引っ張ると泳ぐ姿勢を取り戻す。サオ先にテールの振動が伝わってくる。
もう一回同じポイントへ。
同様に巻いてきて…魚が見つける。
スッと近づき一気に吸い込む。
ゴンッ!
ハッキリとアタリが伝わった。
一瞬待って、後ろにのけ反る感じでアワセる。
のった!
「やっと食った!」
「やったね!」
一気に本流に走る。
ヘビーなタックルなので強引なやり取り。
力ずくでこっちを向かせる。
横に走り、アシの群生している中に突っ込もうとする。
強引にリールを巻く。
間一髪アシへの突進を回避した。
エラ洗い。
デカい!しかも太い!
流れもあり抵抗が激しい。なかなか寄ってこない。
足元まで寄せてもなお抵抗する。
掛り具合は?
上あごにガッチリ。口から少しルアーが見える。糸に傷は入ってないはず。
抵抗しているまんま抜き上げた。
なかなかのカタだ。
「わ~!デカいね。グー入るばい。」
桃代が感動している。
「50UPかもね。」
「これ、ゼッテーあるやろ!」
写真を撮り、指を広げ測る。2回と半分以上!50UPだ!
スケール忘れた。
どうせルアーを結び直さなければいけないのでフックの直前で糸を切り、魚の長さに合わせて切る。
この糸を帰って測る(54cmだった)。
もう一度持って撮影。
そしてそっと逃がす。フワッと漂った後、濁った水の中に勢いよく消えていった。
「じゃーね!今度はウチにきてね。」
手を振る桃代。
ボチボチ薄暗くなってきた
「帰ろっか?」
「うん。」
二人並んで土手を歩く。
たまに乳を触って怒られながら。
大好きな彼女とじゃれ合う。このやり取りがたまらなくいい。
帰って、虫かごに先程捕獲したメスを入れる。
噛み殺されないか、用心のためしばらく観察する。
すぐに潜っていったため、大丈夫と判断。
卵産んだらいーな。
次の日。
雨だったのでお部屋デート。
お茶しながらお菓子を食べながら喋る。
釣りのこと、友達のこと、少しだけ勉強のこと。
桃代と一緒にヒラタクワガタの虫かごを見る。
交尾していた。
ビミョーな空気が流れる。
「やりよるね。」
「ホントね。」
「オレらみたいやね。」
「バカ。」
顔が赤くなっていた。
このあと虫に感化され…した。
まぁ、感化されなくてもしたのだろうけど。
ともあれ。
がんばれ若人!
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