第95話
「神話の時代、大陸中を巻き込んだ、天界の神々と魔界の皇帝達との戦いが本当にあったというのか」
――戦いはきっと今も続いてる。エンテラと呼ばれるこの世界は数多に存在する世界のうちの一つに過ぎないの。異界の神々と皇帝達は、はるか古の時より永劫と戦いを続けている。いくつもの世界を荒廃させながらね。
「ずいぶんと迷惑な話だ」
――そうよ。フリア教の聖典は『天界』つまりは『ユピア』の神々を救いの神々として崇めているけど、私達スティアから言わせてもらえば彼らは途方もなく大きな争いをこのエンテラに持ち込んだ、忌まわしき隣人に過ぎない。
「その忌まわし隣人達のおかげで魔界の者達は去った、と聖典には書かれていたはずだが」
――残念ながらそうではないわ。ユピアの神々は敗れた、このエンテラと呼ばれる世界においてはね。
「だが今もこの世界は存在している。魔界の者達が破滅をもたらすというのすら嘘だと言うのか」
――『ヘルマ』、魔界と呼ばれる暗黒の世界の皇帝達は確かに破滅をもたらす者達よ。
「ならば何故、神々が敗れたはずのこの世界が続いている」
――ヘルマの者達もまた敗れ、このエンテラより去ったからよ。
「いったい誰に。神々すらも破った者達が、誰に敗れたというのだ。お前達古き精霊か」
――いいえ、スティアはユピアの神々と共に戦い、そして敗れた。ヘルマの者達をエンテラより追い遣ったのは人間よ。
「人だと?」
――そう。それもたった五人の男達が、あの途方もなく巨大な戦争での勝者となったの。
「五人? まさか」
――そうよ。彼らは勝者となりそれぞれが王となった。大陸の西に青き海に臨む黄金の国を築き。南西には広大な砂漠を征する剣の国を建てた。北には雪に閉ざされた信仰の国を、南東には聖なる炎を崇めた自由の国を。そして東の果ての島国に不死を夢見た欲深き王国を。
「五大国。奴らが主張する神話の時代、建国の英雄譚。それが実際にあったというのか」
――全てが彼らの語る通りではないわ。五つの巨大な国々はそれぞれが、自身の王こそが唯一の救世の英雄だったと信じている。
「だが事実は違う」
――戦いの勝者は五人いた。だけどその五人すらも彼の国々の物語に語られるような英雄などではなかった。巨万の黄金を求めた商人。武の極みを目指した戦士。神となろうとした僧侶。自由を求めた奴隷。そして不死を望んだ男。
セセリナの記憶の欠片を通して、五人の男達の顔が次々と浮かび上がっていく。
――彼らは皆裏切り者よ。人を、神々を、そして私達スティア、エンテラの生ける者達を裏切り、ヘルマの悪魔達と手を組み、世界を荒廃させた者達。
「……驚いたな。かつて教会から異端視されていた。エネス派の教えが正しかったわけか」
――そして、ただの人間に過ぎなかった彼ら五人の男達にそれだけの力を与えたのが……。
「キングメーカー……。それほどの物を奴らはどこで手にした。お前は言っていたな。石は果てを目指したとて手に入る物ではないと」
――ヘルマの道化師が彼らに石を与えたの。
「道化師?」
――眩惑と欺瞞の道化師フラウデム。
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