第85話

 ここからの展開は予想がつく。

 見慣れぬ存在、摩訶不思議な存在、それを目にし、正体を知り、意思疎通が可能と理解した時に見せる人間の反応、そんなものは決まっている。特にフェスタ・アウラの研究に没頭してきた老魔術師は狂喜して質問攻めをくらわせてくるに違いない。

 百や二百ではきかぬ長い長い時を生きてきたセセリナにとってそれはもう心底うんざりとするほど繰り返されてきた光景だった。

 だから彼女はそうなる前に先手を打つ事にした。とんと足で地面を突いて魔術師達の方へふわりと飛ぶと。

「いい、ボウル村の魔術師さん。あなたがこれから言わんとする事はわかっているわ。ほんとはもう契約外の事だけど、私はとっても心の優しい乙女だから特別あなたの村は助けてあげる。だけどね、いくら心の広い私であっても好奇心の塊みたいな魔術師に根掘り葉掘り、あれやこれやと聞かれるのはすごく不愉快なの。あなたも村の救済者となってくれる者の機嫌を損ねたくなんてないでしょ? だから、質問があるなら私じゃなくて、あの子、レグスにしてちょうだい」

 驚くファバとボルマンに一言も喋らせず、言いたい事だけを押し付けると、セセリナは最後にレグスに対してこう言った。

「という事でレグス、あとはよろしくね。このまま外に出ていてもせっかく高めた霊力を無駄にしちゃうだけだし、私は指輪の中に戻るわ。お説教も途中だったけど、また今度ね。それに久しぶりに力を使ってちょっと疲れちゃった。一眠りするから、村についたら起こしなさいよ」

 欠伸をしながらセセリナはその体を小さな光りの粒子に変えて、レグスの指輪の中へと入っていく。

 そうしてお喋りな精霊が去ってしまうと、残された三人の男達は唖然とするしかなかった。

「何だったんだあれ」

 ファバが当然の感想を漏らしてレグスの顔を見る。

「さぁな」

「さぁなって……」

「俺にもよくわからん」

 セセリナとの会話などレグスも今日が初めてで、彼女について、指輪についてはまだまだわからない事だらけである。

「話は後だ二人とも、村へ戻るぞ」


――さて、何をどう話したものか。

 ボウル村への帰路につくレグスはそんな事をぼんやりと考えながら、少し億劫な気持ちになっていた。

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