第53話
話を終えた二人は野宿の準備を始める。
焚き木を集め、火打石を用いてそれに火をつける。
やる事はこれぐらいだった。
村や街で購入しておいた干し肉や干し豆などで簡単に食事を済ますと後はもう寝るだけである。
「俺が先に火番をしてやる」
レグスが言った。
「いいのか?」
「途中で居眠りされてもかなわんからな」
「見張りぐらい俺でもやれる。山猫でこの手の事はやらされてたからな」
レグスの言い方にムッとして反論するファバ。
「ここはザナールとは違う。いつ魔物が出てもおかしくないザネイラの山の中だ。奴らの多くは夜を好む。暗闇の中、その気配を素早く察知せねばならない。俺がやる。これは決定事項だ」
「ちっ、わかったよ。けどあんたはいつ寝るつもりだ。暗闇がどうのって朝が来るまで一人で見張ってるつもりかよ」
「そのつもりだ」
「大丈夫かよ」
「心配するな。もとは一人旅だ。一日、二日寝る事も出来ぬなどざらだった。慣れたものだ」
ここまで宿を取っていると言っても、ほとんど歩きっぱなしだ。レグスとて疲労がないわけではないだろう。しかしそれはファバも同じ。だったら旅に慣れたレグスに従うのが道理だろう。
「じゃあ、頼んだぜ。このまま眠って起きる頃には首が繋がってなかったなんてのはやめてくれよ」
「お前も途中起こされて寝ぼけないようにな。初動の遅れが命取りになるぞ。武器はいつでも使えるようそばにおいておけ」
「了解、了解」
レグスを見張りに残して先に眠るファバ。
テントも無しの野宿だが、歩き続けた疲れもあってか、眠りに落ちるまでそう時間はかからなかった。
そしてそのまま何事もなく朝を迎えられる、ほどザネイラの地は甘くない。
「ファバ、ファバ、起きろ」
まだ夜のうちにファバはレグスに起こされる。見張り役の交代の時間ではないだろう。
それらが意味する事は一つ。
「でたぞ、奴らだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます