第44話
「得? 言ったでしょ、あなたが辛い思いをするのは、私も嫌なの。だから元気になって欲しい。それだけよ」
「だからそれが何で!?」
「何でって、そうねぇ、ただの性分よ」
「性分?」
「そう、こればっかりは私にもどうしようもないわ。他人には馬鹿にされたり呆れられたりするけどね、損する性格だって」
「俺も同感だね」
「ふふ、でもね結構得する性格だと自分では思ってるの」
「どこが」
「だって、落ち込んでいた人が元気になってくれたら、それだけで私も幸せな気持ちになれもの。どう? お得でしょ?」
「理解できねぇ」
ファバの態度にロゼッタは少しだけ悲しそうにして言う。
「いつかあなたにもわかってもらえるといいのだけど」
「わかりたくねぇよそんなもん。どうでもいいだろ赤の他人がどうなろうと、ましてや……」
そこでファバの言葉が途切れる。
「ましてや?」
ついそう返してしまったロゼッタだったが、彼が何を言おうとしたのか少年の表情を見て察する。
まずい、と思って話題を変えようとするロゼッタだったが。
「俺みたいなのなんて……」
吐き捨てるように漏れ出た少年の言葉に、ロゼッタは胸を締め付けられる思いだった。
「そんな事ないわ」
「あるさ、あんたが変わり者なだけだ」
「違うわ、それは違う。きっと彼だって、あなた事をどうでもいいなんて思っていないはずよ」
「彼?」
ロゼッタが誰の事をさして言ってるのかファバにはわからない。
「彼よ。レグスさんだっけ、彼と旅をしているのでしょう?」
「まさか、冗談きついな。あんたも聞いてただろ、奴が俺に何て言ってたか」
「それでも、彼はあなたを助けたわ」
ロゼッタは優しくも力強く言いきる。
「本当に何とも思っていないのなら、あなたを助けたりしないはずよ。違う?」
「それは……、ただの気まぐれさ」
「気まぐれでお説教までしたりするかしら。きっと心配したからよ、あなたの事を、これから先の事を。もちろんあんな言い方ひどすぎると私も思うけどね。でも本当にどうでもいいと思っている相手には何も言わないものよ。少なくともあなたは、彼にとってそんな人間じゃない」
「どうかな。だいいちあいつと出会って日が浅い、本当にただの他人さ」
「そうなの?」
「そうさ。まだ二週間も経ってない。お互いの事を全然知らない。知りたくもない。そんなんで相手をどう思えってんだ。どうでもいいだろ」
「じゃあ、どうしてそんな人と一緒にいるの」
「利用出来るからだ」
「えっ」
「あいつはすげぇ強いんだ。俺はあいつみたいに強くなりたい。剣を教えてもらって、それで……」
「それで?」
それで、どうするのだろう。どうしたいのだろう。改めて問われると、言葉がでてこない。
「ねぇ、あなたは剣を教えてもらう為として、それじゃあ彼はどうしてあなたと一緒いるの?」
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