第37話 違和感

 いつものお昼休み。

 右京はバスケ部の顧問に呼ばれて、左京くんと千草は次の授業の準備とやらで来られない。

「ねぇねぇ未央ちゃん。今日みんな来ないのー?」

 なぜかわからないけど、私にくっついて来た茉由が校舎の方をキョロキョロ見回して嘆いた。

「あ、うん。今日みんな来ないよ」

「なーんだ。……意味ない」

「え?」

「ううん!これ食べる?」

 聞き返した私の声に被せるようにそう言った彼女は突然お菓子を差し出した。

「あ、ありがとう」

 そのお菓子を貰う時に、『あれ?』と思った。


 差し出されたそのお菓子は、千草が好きな極細のポッキー。

 千草がくれるそれを、私は何だか物足りなくて、いつも一度に2本ずつ引き出す。

 今日も無意識で2本引き出した私。


「……茉由も好きなの?」


『最近ハマってるんだ!』と笑う茉由を見て、メジャーなお菓子だしそんなこともあるか。と完結した。


「未央っ!」


 後ろから急に声をかけられた私は、思わず肩がビクンと跳ねる。

 振り向くと、そこには右京の姿。


『ごめん、考え事してて……』


 ――そう言おうと思ったのに。


「やだ、未央ちゃん!右京君に隠し事でもあるみたいな驚きかたぁ!」


 …………え?

 突然奪われた私の話す順番。

 思わず横を見ると、キャピキャピ笑う彼女は、ポッキーの箱で顔を半分隠しながらさらに言う。


「彼氏に秘密があるんだねー!」


 その言葉を受けて少し曇る彼の顔。


「え?そうなの?未央」

「ない、ないよ!何にも!」


 右京に聞かれて、すぐに大きく頭を横に振ったけれど、それが尚更嘘くさく見えたのか、彼の表情から雲が完全に消えることはなかった。


 ぎこちない空気のまま私の隣に腰かける右京。

「先生の話……終わったの?」

「……うん。次のキャプテンやらないかって」

「え?!……す」


「「右京くんすごーい!!!」」


 また奪われる私の番。

 両手をパチパチと顔の前で合わせた茉由が身を乗り出して騒いだ。

「すごいすごい!右京くん上手いもんね!」

「あ、サンキュ!」

 私の隣から勢いよく立ち上がり、あっという間に右京の真ん前に移動した彼女は、彼の右腕を掴みさらに興奮する。

「試合見に行ってもいい?!」

 そう甘える彼女の態度はあまりにも露骨な気がして、呆気に取られた。

 それに、そんな彼女の行動を受けた右京が、まんざらでもないように見えて、急に腹が立った。

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