第16話 親子ってやつ

「ねぇ、コーヒー飲まない?」


 行くあてのなくなったマグカップを2つテーブルに置いて、彼の隣に腰かけた。

 彼は読んでいた新聞を2つにたたんで私を見る。

「あれ?あいつら要らないって言ったのか?」

「ううん」

 私は首を横に振って、視線を二階に送る。

「男同士の話は邪魔しちゃいけないでしょ?」

 私がそこまで言うと、ピンときたのか彼は立ち上がり『ワインでも飲もうか』と言った。


 湯気のたつコーヒーの横でワイングラスが赤く色づく。

 息子たちの話を立ち聞きしてしまったのは悪かったけど、なんだか楽しくて仕方ない。

「左京はあなたに似てるわ」

「そうか?」

「でも右京もあなたに似てる」

「そうか?」

「そうよ!」

 目尻に皺をよせて彼が笑う。私は幸せだ。


 空になったグラスに、もう一度ワインを注いだ彼の横顔は、少し昔を思い出させた。

 あんなに小さかった二人が、いつの間にか私の身長を追い越して、彼と並んだ。

「私は三人のこと騎士ナイトみたいだと思ってたんだけど、ヒーローだなんて♪」

「ん?」

「千草ちゃんなら大賛成よ。水沼さんって子も気になるー!」

「あんまり騒ぐなよ?」

 と彼は私を軽く睨む。


 さぁ、それはどうかしら。

 そう思った素直な自分をワインと一緒に飲み込んで、笑みを返した。

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