概要
二十年、男のいなかった谷の冬は、百日ある。
峠を一つ越えた先の谷に、冬を越した男はいない。
二十年前の初雪の夜、谷の男は父も夫も兄も、眠ったまま目を覚まさなかった。
それ以来この村には男がおらず、子も生まれていない。
薬を卸しに入った俺は、例年より早い初雪で峠を閉じられた。
「初雪の夜に一人で眠った男は、目を覚まさない」
掟を三行で告げた年長の薬草師は、火を絶やさず、眠ってはいけない者のそばで起きている「火守」を立てると言った。
火守頭の女は、自分から言った。今夜の火の番は私だ、と。
肌で温めて眠らせないのが掟の形。断る道はある。だが峠はもう無い。
翌朝、俺は目を覚ました。二十年ぶりに、谷で朝を迎えた男になった。
火の番は順番になり、狩人も、薬草師も、男を見たことのない機織りも、囲炉裏の前に来る。
雪解けまで百日。俺が眠らない本当の理
二十年前の初雪の夜、谷の男は父も夫も兄も、眠ったまま目を覚まさなかった。
それ以来この村には男がおらず、子も生まれていない。
薬を卸しに入った俺は、例年より早い初雪で峠を閉じられた。
「初雪の夜に一人で眠った男は、目を覚まさない」
掟を三行で告げた年長の薬草師は、火を絶やさず、眠ってはいけない者のそばで起きている「火守」を立てると言った。
火守頭の女は、自分から言った。今夜の火の番は私だ、と。
肌で温めて眠らせないのが掟の形。断る道はある。だが峠はもう無い。
翌朝、俺は目を覚ました。二十年ぶりに、谷で朝を迎えた男になった。
火の番は順番になり、狩人も、薬草師も、男を見たことのない機織りも、囲炉裏の前に来る。
雪解けまで百日。俺が眠らない本当の理
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