胸を締め付けられるような、あまりにも優しく、そして切ない物語でした。
戦時下という逃れられない過酷な運命の中でも、母子を繋ぐのは大義名分ではなく、日々の暮らしのなかにあった温かな記憶や、互いを思いやる泥臭くも純粋な愛情でした。あかぎれだらけの手、夜道の蛍、そして隠された本当の気持ち。細やかな描写の積み重ねが、読者の心に深く染み入ります。
消されたはずの言葉から明かされる息子の本心と、一年越しに届いた手紙の描写には涙が止まりませんでした。絶望の底にいた母親が、ホタルブクロの花と光を通じて三郎の愛を受け取り、最後にはしっかりと前を向いて笑顔を取り戻す結末に、救いと確かな温もりを感じました。
戦争の悲惨さと、それを超える親子の強い絆を美しく描き出してくださり、本当にありがとうございます。心に残る素晴らしい作品でした。
普段は、コメディタッチの歴史ものを書いて、読者のお腹をよじれさせているてっぺいさんですが、今回は、手紙を題材に感動の短編を執筆されました。コメディの舞台を例にあげるまでもなく、笑いと涙は表裏一体であると思いますが、本作はまさにそれ、楽しいお話を書ける人は、こんな泣かせもできるのだと改めて感じました。
主人公は、明日特攻に飛び立つ宮川三郎伍長19歳。死地に赴く前夜に、検閲用に書いたの形ばかりの遺書と別に、母キヨへ、自身の正直な心情を綴った手紙を書き、整備係の田村伍長に託します。
そして、翌昭和21年6月に田村氏がキヨを訪ねて手紙を渡し、「一人で読んで下さい」と。
はい! ここで一旦休憩! お茶飲んで、ティシュを用意して、さあどうぞ!
わたくしも人のこと言えないのですが、人の死に絡めた手紙は、もう反則ですよね。否応なく心が引き込まれます。失恋と違って、魂の再生があり得ないので、やるせないですし。
しかし、最後は、ほんの小さな、奇跡とも言えない出来事がおこり、キヨの気持ちをなだらかにさせていきますのでご安心。
正統派の感動小説。
わたくしはお勧め致します。
一度振り上げた拳。
何事も成さずに下すことは許されない。
死なば諸共。
一億総玉砕。
――――うそぶく本人は、どうせ死ぬ気なんかないくせに。
どこぞの誰かのメンツや、ごキゲン取りの成れの果て。
サル山以下の決議の結果、飢え、倒れ、散るは市井の人々。
これは戦時にとどまらない。割を食うのはいつだって、力なき者たち。
そう。明日の「栄光」を覚悟する、二十に満たぬ三郎のように。
しかし誰にいくら強要されようとも、全体の前に個。体温があり、鼓動を打ち、想いを持つ。
なんのために生きるか。
逝った者、残った者、遺された者。
作中の彼らは、間違いなく熱く生きている。
手紙が手渡される中で描かれる、三者三様の心。
涙なしには読めないが、余韻は優しい。
ご一読あれ。