路上占い、番外編【売る女】
崔 梨遙(再)
買わない男
十数年前のこと、夜のミナミの路上占い、服装は地味でしたが態度のデカい女性が座りました。歳は……40代でしょうか?
『今日は、何を占いましょうか?』
『占いとちゃうねん、1万円ちょうだい』
『はあ?』
『聞こえへんかった? 1万円ちょうだいや』
『あなた、本気で言ってます? なんで僕があなたに1万円あげないといけないんですか?』
『今月、ピンチやから』
『それは、あなたの事情ですよね? 僕には全く関係ないじゃないですか』
『あんた、アホやなぁ。私も大人の女やで。ただで1万円もらえるとは思ってへんわ』
『どういうことですか?』
『1万円くれたら、一緒にホテルに行ってあげる』
『はあ?』
『ホテル代は払ってや』
『いやいやいやいや、アカンでしょう?』
『なんでアカンの?』
『売春禁止法って、知ってます?』
『知ってるわ。私があなたに抱かれるのと、1万円は別の話、ということでええやん?』
『はあ、法律では、あなたを防げないんですね』
『防ぐって何よ!』
『いやぁ、抱きたくないし、1万円をあげるのも嫌だなぁと思って』
『男は最初は断るねん、でも、結局私を抱くねん、最初から正直になればいいのに』
『他にも路上占い師の男性はいますよ、そっちへ行ってくださいよ』
『下見してきたけど、あなたが1番話しやすかったから』
『すみません、迷惑です』
『ちょっと、よく見ないとアカンで。見てや、このFカップの胸』
『胸と同じだけ、腹も出てるじゃないですか!?』
『それは、言うたらアカンやろ! 私に1万円を渡して、私を抱きなさい』
『なんで、そんなに自分を売り込むんですか?』
『今月、ピンチやからや!』
『僕には彼女がいるんです!』
『彼女がいても、一晩くらいええやんか』
『ああ、何を言ってもダメなんですね?』
『私にもプライドと意地がある! 1万円もらうまで帰らへんで!』
『ごめんなさい、僕はあなたを抱きません、1万円も払いません』
『何をしてるの?』
『帰り支度です。あなたが帰らないなら、僕が帰ります』
『帰さへんで』
『邪魔です! 通してください。立ち塞がられたら、帰れないじゃないですか』
『だから、帰さへんって言うてるやんか』
『わかりました』
『また、占う支度を始めたな、残る気になったんやな? それでええねん』
『はい、5千円』
『何これ?』
『あなたにあげます。あなたは1万円もらうつもりが5千円安くなった、僕は払うつもりの無かった5千円を払って5千円損をした。お互いに5千円ずつ泣きましょう』
『5千円かぁ、まあ、ええわ。5千円泣くわ』
『では、帰ってください』
『言われなくても帰るわ』
常識の通用しない女性に5千円も渡したのは大損害でしたが、その後、お客さんが2人来て、5千円をゲットしました。その日はプラスマイナスゼロという結果で終われました。それは良かったのですが、参りました。まさか、自分を売り込む女性が現れるとは!? 皆様も気を付けてください。
路上占い、番外編【売る女】 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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