第一話を読みました。面白かったのでレビューを書かせてもらいます。
短い話なのに、読み終わったあとに重たい余韻が残る作品でした。冒頭から「鬼」と呼ばれる存在が暗い牢に閉じ込められていて、そこには光もほとんど届かない。泥や土にまみれ、ねずみや虫しかいない環境が淡々と描かれることで、鬼がどれほど孤独な場所に置かれているのかが伝わってきます。
特に印象に残ったのは、鬼本人が自分の置かれた状況をほとんど悲観していないところです。兄から「お前のせいで母さんは死んだ」と責められても、鬼は「わからない」と答え、兄が鉄格子を蹴って怒っていることすら「顔が赤くなっておもしろい」と感じている。この感情の薄さが逆に不気味であり、鬼が普通の人間とは違う存在なのだと感じさせます。
一方で、兄の苦しみははっきりと伝わってきました。母親の死、村からの排除、畑を奪われたこと、そして弟を牢に閉じ込めることになった経緯。そのすべてを抱えながら、それでも鬼の見張りに来て、泣いている。鬼を憎んでいるようでいて、完全に切り捨てることもできない兄の複雑な感情が印象的です。
そして最後の「いつもとおなじだった。」という一文が、とても重く感じられました。兄が泣いていることも、鬼が牢にいることも、この家族にとってはすでに日常になっている。その異常な日常が、この物語の大きな魅力だと思います。
鬼とは一体何者なのか。そして、これまで「いつもとおなじ」だった夜に何が起こるのか。静かな始まりだからこそ、これから大きく動き出しそうな物語だと感じました。