戦場で失った相棒が、メイド型アンドロイドになって帰ってきた

凪沙 結

第1話 相棒

 某国某所


 道路の中央に転がった配送トラックは、右前輪をなくしていた。


 荷台は焼け、運転席のガラスも残っていない。そこから百メートルほど先では、灰色の倉庫群が昼の陽炎の向こうに並んでいる。窓という窓が割れ、壁面には黒い弾痕が散っていた。さらに遠くから、途切れ途切れに砲声が響いてくる。


 あと四十分以内に、この道路を通せるようにしなければならない。ダニエル・マーサーは道路脇のコンクリート擁壁に膝をつき、ゴーグル越しに前方を見た。撤退準備を進める友軍車列は、はるか後方でこの道路が開くのを待っている。


 戦線が崩れたわけではない。少なくとも司令部はそう説明していた。部隊配置を整理し、より防御しやすい地区へ下がるための計画的後退。だが、呼び方が何であれ、敵がこちらを追ってくることに変わりはなかった。


「交差点まで確認。時間を食いすぎるな」


『もう遅れている』


 通信ヘッドセットから返ってきた声に焦りはなかった。道路の二十メートルほど先には、濃い灰緑色の履帯車両が停止している。人間が乗り込む場所はなく、大きめのSUVほどの全長に、それより一回り広い幅を持つ低い車体を分厚い履帯が囲み、その上には折り畳み式の大型マニピュレーターと複数の光学センサー、通信アンテナが載っていた。傷だらけの側面装甲には、白いペンキでROOKと書き込まれている。


 M421自律EOD支援車両。EOD――Explosive Ordnance Disposal、爆発物処理――を担う無人車両だ。それが正式な分類だが、そう呼ぶ者はほとんどいない。ダニエルにとっても、もう何年も前からルークだった。


 後方の遮蔽物には、警戒班の兵士たちと並んでもう一両の履帯車両が控えている。M422無人火力支援車両。ルークと同じM420系列の車体だが、上部に載っているのはマニピュレーターではなく、長い砲身の二十ミリ機関砲だった。


「お前が慎重すぎるんだよ」


『爆発物処理で慎重すぎると文句を言う人間は、君くらいだ』


「俺を何年見てきた」


『長すぎるくらいだ』


 ルークの車体後部と側面の格納ラックが開き、六台の小型履帯車が次々と路上へ降りた。親機に比べれば玩具じみた大きさだが、それぞれにカメラ、センサー、小型マニピュレーターを備えている。


 ダニエルが端末へ目を落とす頃には、六台の映像が並んでいた。一番機と二番機は道路の左右へ。三番機は焼けた配送トラックの脇から土盛りへ。残る三機は側溝、倉庫の入口、道路脇の廃車へ散っていく。


 ダニエルが一台ずつ操縦しているわけではない。彼が与えるのは目的で、どの子機をどこへ回すかはルークが判断する。


 六台のうち、三番機だけがわずかに遅れた。右履帯の反応が鈍い。


「三番、また右が遅れてないか?」


『〇・二秒』


「昨日調整しただろ」


『調整したつもりだった、の間違いだ』


「分解して張りまで見たぞ」


『それで直っていないから言っている』


 ダニエルは端末の三番機の映像へ目をやった。昨夜、整備区画の照明の下で何度も回した右履帯が、今も一拍遅れて土を噛んでいる。


「帰ったら見てやるよ」


『昨日も同じ言葉を聞いた』


 ダニエルは返す言葉に詰まり、ゴーグルの縁を指で押し上げた。


「今度こそ見るって」


『無事に帰れたらな』


「縁起の悪いことを言うな」


 ダニエルが鼻を鳴らしたところで、端末左側の映像に赤い枠が浮かんだ。三番機が土盛りの陰で停止している。その先には路面から半分ほど露出した金属片があり、周囲には掘り返された土と細い配線らしきものが見えた。


「見つけたか」


『可能性八十六パーセント。三番は止める。四番を回す』


「三番じゃ駄目か?」


『右履帯が遅いと言ったばかりだ』


「たった〇・二秒だ」


『〇・二秒で死ぬ人間もいる』


「お前は死なないだろ」


 通信の向こうで、一瞬だけ間があった。


『だから私が前に出ている』


 その返答に、ダニエルは何も言わなかった。


 ルークの車体前面でセンサーユニットがわずかに向きを変えた。四番機が側溝から上がり、三番機の横を抜けて金属片へ近づいていく。その間にも、一番機と二番機は交差点へ向かっていた。


 後方から無線が入る。


「EOD、こちら警戒班。車列先頭、十二分後にそちらへ入る」


「こちらマーサー。道路上の不審物を一件確認中。交差点まではまだ確認が済んでいない」


「敵の前衛も近い。あまり時間はないぞ」


「ああ、分かってる」


 警戒班との通信を終えると、ヘッドセットからルークの声が入った。


『分かってる人間は、さっきから時計を三回も見ない』


「うるさい」


 四番機のマニピュレーターが慎重に土を払った。地雷ではなかった。路肩に仕掛けられたIED(即席爆発装置)だった。圧力式ではなく、有線による遠隔起爆らしい。


 ルークが瞬時に周囲の地形と配線の経路を解析し、別の子機を起爆地点候補へ回す。


 ダニエルは擁壁から少しだけ身体を出した。


『前に出るな、馬鹿』


「画面じゃ分からないんだよ」


『私が見ている』


「俺も確認する」


『撃たれたら見られなくなるぞ』


「ほんの二秒だ」


『二秒あれば十回死ねる』


 言い返そうとしたところで、遠くから乾いた連射音が響いた。


 ダニエルは反射的に頭を下げる。弾が飛んできたわけではない。まだ遠い。


 しかし警戒班の無線がすぐに騒がしくなった。


「北東、動きあり。複数」


「了解。監視継続」


 ダニエルは道路の向こうを見た。倉庫群のさらに先で薄い煙が上がっている。


「急げるか」


『急げと言われて爆発物処理が速くなるなら、最初からそうしている』


「口の減らないAIだな」


『君よりは役に立つ』


 数分後、ルークが処理完了を告げた。


 見つけたIEDの処理は終わった。だが交差点の先はまだ十分に確認できていない。


 六台の子機が再び散開していく。三番機だけが少し遅れて後を追った。右履帯がほんのわずかに引っかかる。その癖を、ダニエルは何度も見てきた。


 帰ったら直す。


 今度こそ。


 そう考えた直後だった。


 三番機の映像が白く弾けた。轟音は映像よりわずかに遅れて届き、路肩から噴き上がった土煙の中から、小さな履帯の一部が道路中央まで転がってくる。端末上の識別表示が赤へ変わった。


『三番機、ロスト』


 ルークの声は変わらなかった。


 ダニエルは壊れた映像窓を一秒ほど見た。


「他は?」


『五機稼働。前方警戒を継続する』


「今のはIEDか?」


『違う。飛来方向、北東。敵火力だ』


 その言葉が終わるより早く、倉庫の壁面に弾着が走り、コンクリート片が散った。


「コンタクト!」


 警戒班の怒鳴り声が上がる。ダニエルが擁壁の陰へ身体を押し込むのとほぼ同時に、道路後方の兵士たちも遮蔽物へ入り、銃口を北東へ向けた。その直後、M422の二十ミリ機関砲が吠えた。長い砲身が倉庫群へ向き、短い連射を刻むたび、壁や窓が削られていく。


「EOD、下がれるか!」


「まだ交差点の確認が終わってない!」


「車列が来るぞ!」


「急がせてる!」


『だから確認している』


 ルークが割って入り、残った五台の子機を一気に動かした。一番機と二番機は交差点へ、四番機は道路中央へ進み、五番機は倉庫の陰を走り、六番機は後退路の確認へ回る。敵との距離はまだあったが、火線は確実にこちらへ寄ってきていた。


「子機を戻せ、ルーク」


『まだ終わっていない』


「もういい。車列を先に通す」


『その車列が通る道を確認している』


「車列まで三分だぞ」


『なら三分で終わらせる』


 ルークのセンサーマストが北東へ振れた。その直後、白い閃光が視界を埋め、腹の底を叩く衝撃が遅れて届いた。車体側面から装甲板とセンサー片が飛び、ルークの重い車体が横へ揺れる。


「ルーク!」


『通信正常。左側外部センサー二系統喪失』


 声は聞こえ、履帯も動いている。車体上部の光学装置の一部は吹き飛んでいたが、ルークはそのまま前進を続けた。


「無理するな!」


『走行可能』


「走れるかなんて聞いてない。下がれ!」


『最初からそう言え』


 対装甲火器だった。


 どこから撃たれたのか、警戒班が必死に探している。M422が長い砲身を振り、道路脇の建物へ二十ミリ弾を叩き込んだ。


 ダニエルはルークへ走り寄ろうとした。


『来るな』


「状態を確認させろ!」


『端末を見ろ。全部出ている』


 端末には、左側センサー喪失、外装損傷、補助電源異常、通信帯域低下と、被害状況が並んでいた。それでも、まだ致命傷ではない。


「残りは子機に任せろ。早く下がれ」


『今やっている』


 ルークが方向を変えた瞬間、二発目が車体右下部へ命中した。爆発で履帯が大きく跳ね、金属片が路上へばら撒かれる。車体は右へ沈み込んで斜めに止まり、切れた履帯だけが道路上へ長く伸びた。


『右走行系喪失』


「左だけで下がれないか?」


『旋回はできる。後退速度は出ない』


 それでもルークは、残ったマニピュレーターを路面へついて車体の向きをわずかに変えながら、子機への指示を止めなかった。ダニエルの端末では、四台がそれぞれの持ち場から後退を始め、一番機だけが交差点の先へ進んでいた。


「何やってる」


『一番機を前方確認へ。二十秒で終わる』


「もういいって!」


『よくない。ここで先頭が止まれば、後ろが全部詰まる』


 その通りだとダニエルにも分かっていた。だから余計に腹が立った。


 一番機から映像が返った。交差点の先に大きな障害物はない。右車線の路肩近くに一か所、不審な箇所があるが、センサー上は爆発物の反応がなく、左車線なら十分な距離を取れる。


『全車へ。交差点、通過可能。左車線を維持。速度を落とすな』


「警戒班、聞いたな!」


「聞いた。車列を通す!」


 遠くで大型車両のエンジン音が強くなる。ダニエルがルークを見ると、マニピュレーター一本とセンサーマストの半分以上はまだ生きていた。だが、履帯を失った車体は道路脇に傾いたまま、もうまともには動けない。


「牽引で下がれるか」


『作業中に車列が足止めを食う』


「422に引かせる」


『車列の援護で422は手が離せない』


「じゃあ、後退してからすぐ回収に戻る」


『敵の前衛が迫っている。回収は不可能だ』


「勝手に決めるな!」


『もう時間がない。ダニエル』


 ルークの声へノイズが混じった。ダニエルは眉を寄せる。


「電装系か?」


『主電源不安定。補助系へ切り替える』


「どのくらい持つ」


『分からない』


「お前がそれ言うと怖いんだよ」


『私も同感だ』


 第三の爆発がルークを包んだ。


 直撃だったのか、至近弾だったのか、ダニエルには判別できなかった。土と煙に車体が消え、マニピュレーターの先端が折れて道路へ落ちる。


 ヘッドセットに激しいノイズが走った。


『……ニエル』


「ルーク!」


『通信……低下』


「大丈夫だ! 聞こえてる!」


『車列を……先に』


「ああ、通す!」


 後方から警戒班の兵士がダニエルの肩を掴んだ。


「マーサー! 下がるぞ!」


「……まだルークが!」


「見りゃ分かるだろ! もう無理だ!」


 友軍車列の先頭が通過してくる。


 装甲車両が煙を巻き上げながら、ルークの横を抜けていった。


 ダニエルはその場に踏みとどまった。


『ダニエル』


 声が途切れながらも届く。


「ここにいる……」


『422に撃たせろ。君が戻る必要はない』


 M421の人格コアは、車体中央の耐衝撃区画に収められている。回収不能時にはEOD要員が機密部位を直接焼却する。それはルーク自身も知っているはずだった。


「破壊できるのはセンサーだけだ。コアは残る」


『残っても、もう動かない』


「敵がそう判断する保証はないだろ」


『センサーと通信系を潰せば足りる』


「規定は直接焼却だ。二十ミリ徹甲弾でもコアまで届かない」


 ノイズの向こうで数秒、返事がなかった。


『……君が戻るのか』


 ダニエルは何も返せなかった。その沈黙を切るように、後方から「マーサー!」と怒鳴る声が飛んでくる。


『戻るな!』


「分かってる」


 そこで通信が切れた。


「ルーク?」


 返事はなかった。


 ダニエルは、自分で走ったのか誰かに押されたのかも分からないまま、道路脇の次の遮蔽物まで下がった。M422はまだ射撃を続け、友軍車列が次々と交差点を抜けていく。その向こうでは、ルークだけが道路脇に取り残され、煙を吐く車体の上で折れたアンテナが斜めに傾いていた。


「ルークの破壊処置は?」


「無理だ! 敵がもうそこまで来てる!」


 警戒班長に怒鳴られ、ダニエルは前方へ目を戻した。敵弾が道路を叩き、倉庫の壁が削られている。誰かを連れ戻すような状況ではない。


 さっき「戻るな」と言われ、自分でも「分かってる」と返したばかりだった。


 それでも、背中のアサルトバッグには緊急破壊用の焼夷手榴弾が入っていた。ルークの内部構造を、ここにいる誰より知っているのも自分だ。


「俺が行く」


「マーサー、やめろ!」


「三分で戻る」


「ふざけんな!」


 ダニエルは返事をせず、遮蔽物を飛び出した。


 すぐ近くの路面へ弾が当たり、アスファルト片が膝へ飛んだ。反射的に身体が縮む。怖かった。喉が渇き、呼吸が浅くなる。


 それでも走った。


 後方でM422が連射する。敵火点を抑えるための二十ミリ弾が、建物の角を削り取った。


 ルークまでの距離は大したことがない。平時なら数秒で歩ける。それが今はひどく遠かった。


 車体の陰へ滑り込んだ時、ダニエルは息を荒くしていた。


「ルーク!」


 呼んだが返事はない。


 車体に手を触れると、装甲は熱を持っていた。


「ルーク、俺だ! 返事をしろ!」


 何も返ってこなかった。


 ダニエルはアサルトバッグを下ろし、主室を開いて内部の保護ポーチから破壊処分用の焼夷手榴弾を取り出した。


 何度も訓練した手順だった。


 ダニエルは緊急アクセスパネルのロックを解除した。歪んだ外装が途中で引っかかり、工具を差し込んでこじ開けると、焼けた樹脂と金属の臭いが漏れてきた。内部では警告灯が一つだけ点滅している。


 人格コアは、そのさらに奥にある耐衝撃区画へ収められていた。何度も整備で外してきたから、手順は身体が覚えている。固定具を二つ外し、コネクターを抜けば取り出せる。ただし、破壊するだけなら外す必要などない。このまま焼けば済む。


 ダニエルは焼夷手榴弾を持ったまま動けなかった。遠くでは銃声が続き、無線からは撤退を急かす声が飛んでくる。時間はない。規定どおり焼けばいい。軍の装備だ。ルーク自身も、自分を潰せと言った。それで済むはずだった。


 だが、暗い金属ケースを前にすると手が動かなかった。


『前に出るな、馬鹿』


『昨日も聞いた』


『長すぎるくらいだ』


 さっきまで耳元で聞いていた声が、勝手に蘇る。


「……くそ」


 ダニエルは焼夷手榴弾を脇へ置き、固定具を外した。コネクターを抜いてコアを両手で引き出すと、六、七キロほどの重さが腕へかかる。外装の角はまだ熱を持ち、一部には細かな傷が走っていた。


 開いたままのアサルトバッグへコアを押し込み、ほかの装備を横へ寄せてジッパーを閉める。何をしているのかは考えなかった。考えれば手が止まる。


 代わりに、空になったコア区画の奥へ焼夷手榴弾を押し込み、残った電子機器ごと焼ける位置に固定した。


 そこまでやったところで、すぐ脇の路面が弾けた。


「――っ!」


 ダニエルは車体の陰へ伏せた。


「マーサー! 今すぐ戻れ!」


「終わった!」


 バッグを背負う。肩に重量が食い込んだ。


 ルークの車体から炎が上がり始める。


 一度だけ振り返った。


 大型マニピュレーターが、折れたまま道路に伸びている。


 ダニエルは走った。今度は後ろを見なかった。


 遮蔽物へ飛び込んだ直後、警戒班長に胸倉を掴まれた。


「三分って言っただろ!」


「悪い」


「悪いで済むか、馬鹿野郎!」


「……よく言われる」


 それ以上怒鳴られる前に、ダニエルはM422を指した。


「残骸を潰せ。上部センサーと通信系に榴弾を撃ち込め」


 警戒班長は一瞬だけダニエルを見てから、無線で命令を飛ばした。


 M422の砲塔が旋回した。


 炎を上げるルークへ砲身が向く。


 短い連射。


 二十ミリ榴弾がセンサーマストを吹き飛ばし、光学装置を砕いた。二射目でアンテナと上部機器が散り、三射目がマニピュレーター基部へ食い込む。


 焼けた車体はそこに残った。


 もう何も見えず、何も聞けない鉄の塊として。


 ダニエルはそれを見ていた。


 背中のバッグが重かった。


     ◇


 後方集結地点へ着いた頃には、日が傾き始めていた。


 撤退路を抜けた車両が次々と別の道路へ振り分けられ、負傷者が救護所へ運ばれていく。整備員たちは損傷した車両を確認し、無線では部隊ごとの人員確認が続いていた。


 ダニエルは道路脇に座り、ヘルメットを脱いだ。汗で髪が額へ張り付いている。


 足元にはアサルトバッグを置いていた。


 誰にも触らせていない。


「マーサー」


 呼ばれて顔を上げる。


 EOD班の人員確認をしていた班長が端末を見ながら立っていた。


「421は?」


「対装甲火器にやられて行動不能だ。その場で破棄した」


「完全損失か」


「ああ」


「了解。本部には俺から報告しておく」


 班長はそれ以上聞かなかった。


 破棄した。それ自体は嘘ではない。車体は燃やし、センサーも潰した。戦場に残ったものを見れば、誰だって同じ結論を出す。


 M421一両、戦闘損失。緊急破棄、回収不能。やがて装備台帳から番号が消え、それで終わる。


 班長が離れると、ダニエルは足元のバッグへ目を落とした。まだ周囲には人が多かった。日が落ち、集結地点の慌ただしさが少し薄れるまで待ってから、バッグを持って車両の陰へ移動した。


 中からルークの人格コアを取り出した。表面には擦り傷があり、一角がわずかに焼けている。外から見ただけでは、内部が生きているのかどうかも分からない。


 電源も診断装置もない。それでもダニエルはコアを両手で持った。


「ルーク」


 返事はなかった。


 しばらく待って、もう一度呼ぶ。


「ルーク」


 やはり、何も返ってこなかった。

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