概要
人類が溺れる大洪水を、俺だけが知っている。乗せる人間は、俺が選ぶ。
気象庁で働く天野櫂は、観測データのわずかなずれから、一年後の大洪水に気づいた。
警告した。誰も信じなかった。
職場で笑いものにされ、「方舟でも造る気か」と噂され、気づけば精神科の保護室に閉じ込められていた。
そして一年後、川は切れた。鍵のかかった部屋で、櫂は水に沈んだ。
目を覚ますと、一年前の十月だった。
ベランダのサツマイモが、手をかざしただけで花を咲かせる。
その力は、人の怒りと妬みを浴びるほど強くなる。
だから今度は、誰にも警告しない。
祖母の形見の算盤を弾き、金を作り、頑固な老職人たちと、水に沈まない船を造る。
乗せられる人数は、食料が決める。
乗せる人間は、俺が選ぶ。
誰も信じなかった大洪水まで、あと一年。
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