黒船来航から箱館戦争まで、激動の幕末を一人の武士の生涯から描いた物語。
特に印象に残ったのは、中島三郎助が単なる「旧幕府側の武士」として描かれていないところです。
黒船を見て日本の海防の遅れを痛感し、異国の技術を学び、造船や海軍の近代化に尽くす。それでも最後には、長年仕えてきた幕府への「義」を捨てず、息子たちとともに千代ヶ岡へ向かう。
そして父の背中を追う恒太郎と英次郎。
最後の戦いで三人が並んで戦う姿は、悲しいのにどこか美しい。
「好きに生きよ。だが……義だけは……捨てるな」
この言葉に、三郎助が生涯をかけて守ろうとしたものが凝縮されているように感じました。
勝者の歴史ではなく、時代の終わりに何を信じて生きたのかを描く幕末もの。最後に残る「風」の余韻まで含めて印象に残る作品でした。