概要
私の針には値段がついた。殿下の求愛には、まだ慣れません。
「リリアと結婚する」
妹のドレスを縫っていたエレノアに、婚約者が告げた。
父も妹も知っていた。知らなかったのは、針を持つ自分だけ。
それでも父は言う。家を出る前に、妹の婚礼衣装は仕上げていけと。
――仕上げません。
母の裁縫箱を抱えて出た先で、出会ったのは破れた王妃のドレスだった。
裂け目に葉を三枚。いつも家でしていた針仕事を、王宮の職人が見ている。
「その修繕代は、いくらだ」
そう尋ねてきたのは、王弟セドリック殿下。
初めての給金。遠慮なく叱って、一緒に笑ってくれる工房の仲間。
誰かのために縫う毎日は同じなのに、帰り道が少しずつ楽しみになる。
ただ、仕事を見に来るはずの殿下は、なぜか仕事が終わっても帰らない。
王妃の大切な一着を任された頃、実家から届いたのは婚礼衣装を持って会いに
妹のドレスを縫っていたエレノアに、婚約者が告げた。
父も妹も知っていた。知らなかったのは、針を持つ自分だけ。
それでも父は言う。家を出る前に、妹の婚礼衣装は仕上げていけと。
――仕上げません。
母の裁縫箱を抱えて出た先で、出会ったのは破れた王妃のドレスだった。
裂け目に葉を三枚。いつも家でしていた針仕事を、王宮の職人が見ている。
「その修繕代は、いくらだ」
そう尋ねてきたのは、王弟セドリック殿下。
初めての給金。遠慮なく叱って、一緒に笑ってくれる工房の仲間。
誰かのために縫う毎日は同じなのに、帰り道が少しずつ楽しみになる。
ただ、仕事を見に来るはずの殿下は、なぜか仕事が終わっても帰らない。
王妃の大切な一着を任された頃、実家から届いたのは婚礼衣装を持って会いに
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