美しい世界。
冒頭からとにかく、作品全体に漂う幻想美に強く心を惹かれました。
主人公である姫は、とある国の王子に見初められて「月の姫」と名付けられる。
彼の名前はヘリオスと言い、「太陽」を意味する名前を持つ。
太陽と月。この対比がとても美しく、静謐感のある作品世界の情景が自然と浮かぶようでした。
月の姫とヘリオスは、現在では結ばれない運命になっている。ヘリオスにはエレインという婚約者がいる上、月の姫は「宮殿」の中から出られないという制約も。
そうして読み進める中で、「あ!」と思わされる展開になるのがまた秀逸でした。
月の姫とヘリオスは実質的には「どんな関係」にある存在だったのか。
第三話になって物語の構図が大きく変化し、月の姫の正体、そしてヘリオスにとってどんな存在だったのかが明らかになることで、見えていた風景がまったく違うものへとシフトしました。
そして、見えてくる世界がまた美しい。
月の姫の正体が判明したことで、とにかく「いいなあ」としみじみと感じ入らされるようになりました。
姫と王子の関係性だけでも十二分に美しかったけれど、「この正体」に基づく関係性がまた幻想的な雰囲気があって素晴らしい。
優しさに満ちた世界観で、読み終えた後に健やかな気持ちになれる素敵な短編でした。