両腕を失った孤児のカイは、命を救ってくれた医者に恩を返そうとする。しかし、その願いから選んだ道が、取り返しのつかない過ちにつながってしまう。
この作品に惹かれたのは、人を思う気持ちの確かさと、その行いの正しさを、丁寧に分けているところです。善い目的があれば、悪い手段も許されるのか。過ちを犯した人には、その後を生き直す余地があるのか。短い寓話の中で、その問いが人物たちの関係を通して迫ってきます。
戦う力を得た腕では、眠る人に毛布をかけられない。「手」の意味が変わっていく描写も印象的です。強くなることと、大切な人を支えられることは、同じではない。その隔たりが、カイの切実な願いを浮かび上がらせます。
許せない気持ちと、生きていてほしい気持ちは両立するのか。私はそこに、この物語の最も心に残る問いを感じました。読む人がどこに重みを置くかによって、救いの見え方も変わる作品だと思います。