終始一貫して「僕」の一人称で語られる短編です。
物語冒頭、巨大怪獣を運搬中のトレーラーがやってきます。
やってきたトレーラーに載っていた頑丈そうな檻は、しかし、ひしゃげて中身は空っぽ。
さて、中に居たはずの怪獣の行方は如何に……。
言ってしまえばそういった話なのですが、静謐で穏やかな「僕」の語り口には引き込まれるものがあります。
部屋でカレーを作ってみたり、彼女との同居を想像してみたりする「僕」。
でも、そんな「僕」を通じて語られる彼女とのやり取りは、どこか胡乱な空気も。
「彼女」が何者なのか、分かるようでいて、よくよく考えるとやっぱり分からなくなったり。
より大きな物語の一部分だけを切り取ったような、不思議な雰囲気の漂う物語です。
読んでいて、想像力をとても搔き立てられました。