第7話 淑女の嗜みどこへやら


何においても能力が高く、幼い頃から神童として名の知れていたディアーヌ。


しかも、人当たりも面倒見も良いため、名家の子女たちの家庭教師として、引っ張りだこになっていた。


最近、ますます家庭教育の仕事が増えきており、今日もアライダ嬢(11)への授業のため、ブルノン家まで訪問してきたのだった。


「お忙しいとお聞きしますが、良くぞ来てくださった。うちのアライダは他の人は嫌だと聞かなくてね。」


「私も、アライダ嬢が大好きですので、光栄ですわ。」


「ディアーヌ様!!今日も色んなお話聞かせてちょうだいねっ。」


午後からみっちり、授業続き。そして、本日最後の授業が終わり、部屋を出ると、ブルノン夫妻がディアーヌを待っていた。


「本日も心から感謝いたしますわ。アライダ、あなたもきちんとお礼を言った?」


「言ったわよ!!今日も、ほんと、面白いことをたくさん知れたわ!」


「はは、良かったな。ディアーヌ嬢、どうです、お茶くらい飲んで行かれませんか。」


「せっかくの御言葉ですが、この後野暮用が控えておりますので。」


「そうか。では、残念だが、またの機会に是非ディナーにもご招待させていただきたい!」


「ええ。いつの日か、是非。」


「えー、帰っちゃうの、ディアーヌ様!」


「ごめんなさい、アライダ嬢。また来る時までに、予習復習、忘れないようにね。」


「そうだ!ディアーヌ様、美の秘訣を教えていただけませんこと?」


「淑女のたしなみを、忘れないことですわ。」


ディアーヌは微笑みながらも、夜中のドーナツやカップラーメン、めんどうで髪も乾かさずに寝たり。そんな日常を思い浮かべて、ディアーヌは若干自己嫌悪に陥った。


「頑張りますっ!もっと、ディアーヌ様の美しさの秘密について教えていただきたいですわっ。」


「その笑顔と向上心があれば、アライダ様はアライダ様らしく、光り輝きます。」


「あら、嬉しい!!」


家族に見送られ、ブルノン家を後にしたディアーヌ。すぐさま、帰宅。


「あーーっっ」


ベッドに倒れ込み、枕に顔を埋もれさせた。ダメだ、このままだと寝落ちしてしまう。


とりあえず、窮屈なドレスを脱ぎ捨てる。着替えは、こちら!


テレレレッテレーー


「ユ〇クロのスウェット上下(黒)〜〜♪」


ニッポンで入手した、これが、一番ええねん。

他の人には見せられない格好ね。その背徳感込みで、最高。


少し大きめで、楽に着られる。こんな衣装が貴族の間にも流行してくれないだろうか。


さてさて。寝落ちする前にメイクでも落とすか。


綺麗さっぱりスッピンになったディアーヌは、スウェット姿でベッドの上をゴロゴロ。


(お腹、空いたなぁ。明日は久しぶりの午前休みだし……でも、着替えるの、面倒だなぁ…)


そして、ディアーヌは覚悟を決め、起き上がった。


(私、このまま、出る!!!)


ダボダボのスウェットにノーセットの髪、もちろんスッピン。


普段ならこんな格好のまま出ようなどとは思わない。


日頃の疲れと空腹と勢いが、ディアーヌをそうさせたのである。


一応、黒縁のメガネで変装してから、テーブルライトを持ち上げ、鍵を手にする。


(さて、今日はどんな街が、お酒が、私を待っているのかしら。)


あ、保湿ケアとかしてないな。まあ、夜やれば良いか。


そんなことを考えながら淑女も青ざめるズボラスタイルのまま、ディアーヌは異世界へと引き込まれて行ったのであった。

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