桃花の谷。ふわふわの妖怪。湯気を立てる中華料理。
こんな迷宮なら、攻略するより住みたい――!
そう思った時点で、もうこの物語の術中です。
地図師の仕事は、迷宮の最短ルートを描くこと。
ところが、地図師を目指す十六歳の知微が地図へ書き込むのは、
妖怪がどこで眠るのか。
どこで水を飲むのか。
何を美味しそうに食べたのか。
「そんなこと、地図に必要!?」
思わず笑ってしまうようなことばかり。
でも――ここからが、この物語の本当に面白いところです!
人間には道に見えなくても、そこで暮らす妖怪たちには「帰り道」がある。
知微は妖怪をただの攻略対象として見るのではなく、同じ景色の中で生きる存在として見つめ、一緒に食べ、笑い、その暮らしまで地図へ残していきます。
だからこそ、人間が見落としていた道が見えてくる。
誰も必要だと思わなかった情報が、
誰も知らなかった景色への鍵になる。
この瞬間が、たまらない!
しかも、この迷宮がまた魅力の宝庫なのです。
嘘ばかりつく、ふわふわの訛獣。
猫らしさ全開なのに、とんでもない力を秘めた九命。
桃花の谷に、大瀑布、水面に浮かぶ不思議な月。
そして――容赦のない中華飯テロ!
蕃茄炒蛋、陽春麺、三蝦麺、藕粉圓子、小籠包。
読んでいるだけなのに、湯気も香りも届いてきそうで、お腹が空く。
なのに料理は、ただ美味しそうなだけではありません。
同じものを食べることで、妖怪と距離が縮まり、人と人の間にも会話が生まれていく。
食べることも、笑うことも、寄り道することも――全部が旅になって、全部が地図になっていくのです。
最短距離なんて、きっとこの物語にはいらない。
急がなくていい。
寄り道したっていい。
だって、道を外れたその先にこそ、まだ誰も知らない景色が待っているのだから。
百景迷宮、その先にはまだ九十以上の未知がある。
次はどんな妖怪に出会う?
何を一緒に食べる?
どんな景色が、地図の余白を埋めていく?
考えるだけで、もう次のページを開きたくなる。
鉄鍋を背負った地図師見習い・知微と一緒に――
さあ、
誰も知らない百景を、見つけに行きませんか!
ダンジョン――それは、恐ろしいモンスターと冒険者たちが命を削り合う、魔境……。しかしここ「百景迷宮」は一味も二味も違うようです。
主人公チビが遭遇した第一住人もとい、「訛獣」。
字面だけだと中々凶悪そうですが――、どう見てもウサギのゆるキャラです。
どれ位ゆるキャラしているかと言うと、過失とは言え耳を踏んでしまったチビへの制裁が、ふわふわ耳による往復ビンタ(全く痛くない、むしろ心地よい)で済まされる程。
そんなチビはチビで、持参した中華鍋と食材をふんだんに使った手料理で、瞬く間に訛獣たちを手懐けてしまいます。捉妖師(モンスターテイマーのような職業)とは言え、チビ、恐ろしい子……。
それだけでなく、薄霧がかった桃花の林や、堂々たる大瀑布、謎めいた池に落ちた月――と、まだ見ぬ絶景が、この「百景迷宮」には隠れていそうです。
地図師を目指すチビの、モフモフで美味しい幻想探検譚!!