自分に優しく接する相手に、優しさを返すことは容易い
しかし、自分を虐げてきた相手に、自分だけが優しくすることは容易ではない
対象となる人間によって、自分の行動も変化する
対象となる人間によって、自分の善悪が変化する
相手を見て、行動を決定する間には、
感情の「損得勘定」が介在する
正しい行動がわかっていたとしても、
正しい行動をとれなことがあるのはそのせいだ
人間の本質とは表面だけではわからない
綺麗に整備された井戸の水が綺麗かどうかはわからないように、
上澄みだけを掬ってみても全体はわからないように、
一番深い、底の底から拾い上げる必要がある
そして拾い上げた後に吟味しなければならない
貧しい人の一万円の募金と、大金持ちの一万円の募金に、
貨幣価値以外の差異が生じるように、
人の優しさにも
価値に違いがあるかもしれないのだから
物乞いの男がひとつの井戸を発見することで始まる短編小説です。
今まで散々な扱いを、人から、世界から受けてきた男が、状況の変化に対して何を思うのか。
男の心情が丁寧に描かれ、人間の本質について考えさせられます。
本作を読んで、「自分だったらどうするか」を考えてみてはいかがでしょうか。