ポプコンおじさんとイタズラたぬき
むかしむかし、とうもろこし畑のとなりに、小さな村がありました。
その村には、とうもろこしのように黄色い帽子をかぶった、ポプコンおじさんが住んでいました。
ポプコンおじさんは、子どもたちに大人気。
焼きたてのポップコーンを配ったり、ヤングコーンたちに水をあげたり、毎日忙しく働いていました。
けれど、おじさんには、ひとつだけ困ったところがありました。
とっても短気なのです。
怒ると顔がみるみる赤くなって――
「ぬおおおおおっ!」
ぽんっ!
ぽぽんっ!
ポップコーンが頭から飛び出してきます。
でも、ポップコーンなので、誰も痛くありません。
ぽふっ。
ころん。
ぽすん。
村の子どもたちは、それを知っていました。
「おじさん、また怒ってる!」
「ポップコーン、ひとつちょうだい!」
「こらーっ! 今は反省するところだぞ!」
そんなある日のこと。
森の奥に住む、いたずら好きのたぬきが、村へやってきました。
たぬきの名前は、ポン太。
ポン太は、村の入り口にある看板を見つけました。
そこには、こう書かれていました。
「ポプコンおじさんの畑。勝手に入らないでね」
ポン太は、看板を見ながら、にやりと笑いました。
「へへへ……。勝手に入らないでね、だって」
ポン太は、看板の後ろに隠れて、そっと畑の中へ入りました。
すると、ヤングコーンたちが、風に揺れていました。
「こんにちは!」
「こんにちは!」
ポン太は、ヤングコーンたちを見て、目を輝かせました。
「おやおや。小さなとうもろこしが、いっぱいだ」
「ぼくたち、ヤングコーンだよ!」
「へえ。じゃあ、ちょっと遊ぼうか」
ポン太は、ヤングコーンの葉っぱを一本、そっと引っ張りました。
「やめてー!」
「いたずらしないでー!」
ヤングコーンたちが、びっくりして声を上げます。
そのときです。
「こらあああああっ!」
畑の向こうから、ポプコンおじさんが走ってきました。
「誰だ! 大切なヤングコーンをいじめているのは!」
ポン太は、びっくりして飛び上がりました。
「ひゃっ!」
おじさんの顔が、みるみる赤くなります。
「ぬおおおおおっ!」
ぽんっ!
ぽぽんっ!
ぽぽぽぽぽんっ!
ポップコーンが、ポン太の頭に降ってきました。
ぽふっ。
ころん。
ぽすん。
「わあああ!」
ポン太は、頭を抱えました。
でも、痛くありません。
むしろ、甘い匂いがします。
「……これ、食べられるの?」
「こら! 食べている場合じゃない!」
「はい……」
ポン太は、しょんぼりしました。
ポプコンおじさんは、ヤングコーンたちをそっと撫でました。
「大丈夫か?」
「うん。びっくりしただけ」
「そうか。よかった」
ポン太は、少しだけ反省しました。
「ごめんなさい。もう、葉っぱを引っ張らないよ」
「うむ。わかってくれれば、それでいい」
おじさんの顔の赤みが、少しずつ消えていきました。
するとポン太は、ふと考えました。
「……でも、このおじさん、怒るとポップコーンが出るんだよね」
ポン太の目が、きらりと光りました。
「そうだ!」
次の日。
ポプコンおじさんが畑で水をあげていると、どこからか声が聞こえてきました。
「おじさーん!」
「ん?」
「おじさーん!」
「誰だ?」
おじさんが振り向くと、ポン太が木の上に座っていました。
「こんにちはー!」
「ポン太か。そこから降りなさい」
「いやだよー!」
「こら!」
「へへへ!」
ポン太は、木の枝を揺らしました。
すると、枝から葉っぱが落ちてきて、おじさんの頭にぽすん。
「……」
おじさんは、顔を赤くしました。
「ぬおおおおおっ!」
ぽんっ!
ぽぽんっ!
ポップコーンが、木の上のポン太に飛んでいきます。
「わあああ!」
ぽふっ。
ころん。
ぽすん。
ポン太は、ポップコーンを頭に乗せたまま、大笑いしました。
「わははは! もっと怒ってー!」
「こらーっ! 降りてこーい!」
ぽんっ!
ぽぽんっ!
ポン太は、木の上を逃げ回ります。
「わーい!」
「待ちなさーい!」
村の子どもたちが、その様子を見て集まってきました。
「ポン太、楽しそう!」
「おじさん、ポップコーンいっぱい出てる!」
「こら! 見物してないで、ポン太を捕まえてくれ!」
「はーい!」
子どもたちは、木の下で手を広げました。
ポン太が枝から飛び降りると――
「つかまえた!」
「わあっ!」
ポン太は、子どもたちに抱きかかえられました。
「降参、降参!」
ポプコンおじさんは、息を切らしながら近づいてきました。
「まったく……。いたずらも、ほどほどにしなさい」
「ごめんなさい」
「でもな、ポン太」
「なあに?」
「人を驚かせるいたずらは、相手が笑えるものにするんだぞ」
ポン太は、少し考えました。
「じゃあ、どうしたらいいの?」
おじさんは、大きな袋を取り出しました。
「今日は、みんなでポップコーンを作るぞ」
「わーい!」
「ポン太も手伝いなさい」
「うん!」
大きなお鍋に、とうもろこしの粒を入れます。
ふたをして、火にかけると――
ぽんっ!
ぽぽんっ!
ぽぽぽぽぽんっ!
「わあああ!」
「すごい!」
ポン太は、目を丸くしました。
「おじさん、これ、魔法?」
「とうもろこしの魔法だ」
「ぼくもできるかな?」
「やってみなさい」
ポン太は、お鍋の前で胸を張りました。
「ぽんっ!」
……。
何も起こりません。
「ぽぽんっ!」
……。
やっぱり、何も起こりません。
子どもたちは、けらけら笑いました。
「ポン太は、怒ってないから出ないんだよ!」
「そうか!」
ポン太は、頭をかきました。
「じゃあ、怒ったふりをしてみよう!」
「ぬおおおおおっ!」
……。
やっぱり、何も起こりません。
ポプコンおじさんは、大笑いしました。
「ははは! ポップコーンは、怒ったふりじゃ出ないんだ!」
「じゃあ、どうして出るの?」
「本当に怒ったときに出るんだ」
ポン太は、少し考えてから、にやりと笑いました。
「じゃあ、今度はおじさんを怒らせないいたずらを考えるよ!」
「ほう。どんないたずらだ?」
ポン太は、ヤングコーンたちのところへ走っていきました。
そして、畑の入り口に、小さな看板を立てました。
「ヤングコーンのお昼寝中。静かにしてね」
その看板を見たポプコンおじさんは、思わず笑いました。
「なるほど。これはいい看板だ」
「へへへ!」
ヤングコーンたちも、嬉しそうに葉っぱを揺らしました。
「ありがとう、ポン太!」
「どういたしまして!」
その日の夕方。
ポプコンおじさんは、ポン太と子どもたちに、できたてのポップコーンを配りました。
「今日は、特別にバター味だ」
「わーい!」
「おじさん、ありがとう!」
ポン太も、ポップコーンをひとつ口に入れました。
「おいしい!」
「そうだろう」
「ねえ、おじさん」
「なんだ?」
「ぼく、明日も遊びに来ていい?」
おじさんは、少しだけ眉を上げました。
「いたずらは、ほどほどにな」
「うん!」
「ヤングコーンを大切にすること」
「うん!」
「それから――」
おじさんは、にっこり笑いました。
「みんなが笑えるいたずらなら、大歓迎だ」
ポン太は、嬉しそうに尻尾を振りました。
「わーい!」
すると、おじさんの頭から――
ぽんっ。
小さなポップコーンがひとつ飛び出しました。
「……あれ?」
ポン太が驚くと、おじさんは笑いました。
「どうやら、嬉しいときにも出るようになったらしい」
「じゃあ、ぼくも嬉しい!」
ポン太は、両手を上げました。
「ぽんっ!」
……。
何も起こりません。
「おじさん、ずるーい!」
「ははは!」
村の子どもたちも、ヤングコーンたちも、みんな大笑いしました。
ぽんっ。
ぽぽんっ。
ポップコーンの甘い香りが、畑いっぱいに広がります。
それからというもの。
ポン太は、村の人気者になりました。
いたずらをするときは、誰かが悲しくならないように。
ヤングコーンたちには、優しくするように。
そして、ポプコンおじさんが怒りそうになったら――
「おじさーん、深呼吸!」
「すーっ……はーっ……」
「ぽんっ!」
「あっ、出ちゃった!」
みんなで笑うのでした。
今日も、とうもろこし畑のとなりには、笑い声が響いています。
そしてポプコンおじさんとイタズラたぬきは、仲良くポップコーンを食べながら、次のいたずらを考えているのでした。
おしまい。🌽🍿🦝💕
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます