わたしはしばらく呆然としていたけど、「猫かな?」「かわいいー!」とか言って触ろうとしてくるプレイヤー(と思われる人)に気付き、すぐさま逃げた。
流石に嫌がる猫を無理やり触ろうとするような人はいなかったのか、プレイヤーたちが追ってくることはなかった。
「にゃあん……」
ため息を出そうとしても、出るのは可愛らしい鳴き声だけ。
私の魂…アバターは猫である。これは疑いようのない事実らしい。
はぁ。
これからどうしよう。
「このゲーム、止めちゃおうかな?」なんて考えも過ぎったが、AFOは意外と高い。バイトで稼いだわたしの数万円が水の泡になるなんて許せない。
このゲームを続けると決めたわたしはまず、ステータスを見てみることにした。
自分がどの種族なのかとか、ちゃんと分かってないとね。
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『浅葱』Lv.1
種族:キャスパリーグ
分類:最上位幻獣
体力:2600
魔力:1800
攻撃:180
防御:70
知力:220
精神:60
俊敏:180
器用:40
[スキル]
なし
[称号]
【災厄の猫】
[固有特性]
【高位魅了】【邪悪の化身】【不死】
所持金:0セル
所持SP:100
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……えっ??
え、災厄の猫ってなに??
わたしの魂って邪悪の化身の猫なの??
え??
いやいやいや、待って。待って待って。
わたしは石畳の上にぺたんと座り込んだまま、もう一度ステータス画面を見直した。けれど、何度見ても内容は変わらない。
そこに表示されているのはどう考えても初心者向けゲームで配られるような無難な初期ステータスではなく、どちらかというとラスボス戦の直前で開示される裏設定資料みたいな物騒な単語のオンパレードだった。
最上位幻獣で、災厄の猫。
邪悪の化身で不死ぃ??
しかも固有特性が全部嫌すぎる。
もっとこう、「夜目」とか「高所着地」とか、そういう猫らしいやつはなかったのだろうか。
なんでわたしの猫要素、魅了と邪悪しかないの?猫ってそんな生き物だったっけ? いや確かに気まぐれだし人類を下僕扱いしてる感はあるけど、さすがに邪悪の化身は盛りすぎでは?
というか分類、最上位幻獣って。
普通そこは「小型動物」とかじゃない?
なんで世界観の頂点みたいな場所に猫がいるの?
混乱しすぎて頭がぐるぐるしていたけれど、とりあえず一つだけ理解できたことがある。わたし、多分これはかなりヤバいやつだってことだ。
問題は、ヤバい方向が分からないことである。
強いのかもしれない。でも同時に、ものすごく危険な存在なのかもしれない。だって災厄って書いてあるし。平和にスローライフを送れそうな雰囲気がまるでない。
わたしは恐る恐る、ステータス画面の【高位魅了】をピンク色の肉球でタップした。すると半透明のウィンドウが追加で開き、説明文が表示される。
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【高位魅了】
周囲の対象を強く惹きつける。
精神耐性の低い存在は、対象への敵意を維持できない。
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「いや怖っ」
思わず漏れた声は「みゃっ」になった。
なにこれ。洗脳能力じゃん。
しかも敵意を維持できないって、完全に敵対行動封じるタイプの能力では?初心者が持ってていいスキルじゃないでしょこれ。
というかスキル欄は「なし」なのに、固有特性だけ異様に強くない? バランス調整どうなってるのこのゲーム。
いやまあ、わたしがレベル1の生まれたてなのが原因なんだろうけど。レベルが上がったらもっと怪物っぽくなるんだろうけど!!
嫌な予感しかしないまま、次の【邪悪の化身】を開く。
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【邪悪の化身】
あなたは「災厄」として世界に刻まれている。
一部存在はあなたを崇拝対象として認識する。
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「世界観が……重い!」
前脚を顔に押し当てた。
いや、もっとこう、あるでしょ?まだ普通の猫の方が良かったよ!?
普通は「猫耳族です!」とか「獣人です!」とか、そういう可愛い方向に行くじゃん。なんで初手から世界に刻まれてるの。しかも崇拝対象ってなに。怖いんだけど。
そして最後に残った【不死】。
嫌すぎる。絶対ロクでもない。
でも確認しないわけにもいかないので、わたしは覚悟を決めて説明欄を開いた。
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【不死】
あなたは死亡しても完全には消滅しない。
条件を満たすことで再構築される。
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「ふわっとしてるなぁ……」
説明が雑!
いや助かるけどね?死んでも平気なのはありがたいけど!
でも条件を満たすことで再構築って何?その条件が「世界を七日以内に滅ぼす」とかだったらどうするのさ。
わたしは頭を抱えたくなったが、今の身体では耳の後ろを掻くことしかできなかった。しかもその動作が妙に自然で、自分でやっておきながらちょっと猫っぽいな……などと思ってしまい余計に複雑な気持ちになる。
わたし今、「世界に刻まれた災厄」扱いなんだけど。
どう考えてもスタート地点を間違えている。
えーーっと。
と、とりあえず……下僕(飼い主)を作るかぁ?