どもーカクコン微妙でムムムとなってるユーラですー
強化人間と美少女アンドロイドの方は完全に爆死してしまったので現在更新停止、愛機を黒く塗っただけなのに!は隔日投稿継続中ですが…いやー中々厳しい。
なんで今絶賛3作目の準備してるんですが、構想段階で試作プロローグを丸々ボツにしたので、供養という意味も込めてここで公開したいと思います。
第0話 英雄を送り出し、死神は斃れる。
-マスター、全方位から敵接近中です-
『囲まれた…?』
「クソッ…まだ集結地点は遠いってのに…」
荒れ果てた平原に佇む白と黒の人型兵器、その黒い機体のコックピットで少年「天月ハル」は歯噛みして呟く。彼が視線を向けるレーダー画面には、自機を中心に無数の光点が円状に映し出され、敵に囲まれた事を静かに示していた。
-捕捉した総敵数凡そ32800。貴方方2人なら殲滅も可能ですが、最終作戦には間に合わないでしょう-
加えて愛機のAIが告げる情報は、これから人類最後の作戦に向かう2人にとって、最悪に近いものだった。
◇
—————「それ」が宇宙から飛来したのは突然だった。
栄華を極めていた近未来の地球に、絶望が舞い降りる。
『ダメだ、撤退しろ!』
『何故攻撃が効かんッ!?』
都市も、国も、文化も、暦すらも、「それ」…機械生命体〈ヴォイド〉は破壊した。
だが数多の星々を喰んだヴォイドに、人類は人型機動兵器〈スレイヴ〉をもって抗い、どうにか拮抗状態まで持ち直す。そして長い年月が過ぎ去っていった。
無論宇宙進出など出来るはずもなく、ひたすら人類はヴォイドとの戦いに明け暮れ、科学技術は歪に発達して行く。
だが人類の進歩を上回る速度でヴォイドも進化を続け、やがて《《拮抗状態は崩れ去った》》。
『嘘だろ…何て…』
『終わりだ。何もかも…』
人類の支配領域に現れた巨大なヴォイドは、遥か昔の襲来を彷彿とさせる様な絶望を振り撒き、人類は再び滅亡の淵に追いやられる。
…その時、英雄が現れた。物語の主人公の様な、英雄が。
『アイツらは僕が倒します!あなた達は退いて下さい!』
英雄の名前は、〈白星レン〉。
白き流星の様に現れ瞬く間に無数の「ヴォイド」を屠ったレンは、その後の戦場でも輝かしい戦果を上げ、人類の希望の星と成る。…そして彼の陰に佇む黒い少年など、誰も気に留めなかった。
…更に時は経ち、白星レンが戦場に降り立って数年。白星レンの活躍で再び拮抗状態に戻ったヴォイドとの戦いに終止符を打つべく、人類はヴォイドの中枢を破壊する最終作戦の実行を決める。
ここで舞台は冒頭へ。
◇
「レン、お前だけでも集結地点に向かえ。今の人類には、お前が必要だ」
『ハル…』
ハルの言葉に、レンは躊躇う様子を見せその場から動けずにいた。幼馴染であるハルを置いて自分だけ。など様々な感情が渦巻きレンの足を止めさせていたのだ。
「安心しろ、全部片付けてお前の勝利の凱旋には間に合う様にするさ。俺の強さは、お前が1番分かってるだろ?」
『でも…』
-レン、時間がありません。早く移動を-
レンの機体も彼に決断を迫る。それでもなおも渋るレンにハルは、最後の一押しをする。
「でもじゃねぇ。さっさと行かないと彼女に言いつけんぞ」
『なっ!?それはちょっと卑怯じゃ無いかなぁ!?』
「だったら早く移動するんだな」
はっはー、と笑いながら言うハルにレンはため息を吐き、別れの言葉を告げる。
『じゃあ…僕は往くよ』
「あぁ、人類を救ってこい」
短いやり取りに感情を乗せ、彼らは別れる。やがてレンの機体は然程時間を掛ける事なく戦闘区域から離脱し、それを確認したハルは、改めて周囲を見渡した。
-マスター。全て分かった上で行かせましたね?-
「何のことやら?」
-…まぁ良いです。それで?我がマスターはどれだけの勝算があると見積もった上で、この場に残ったので?-
「それはお前が1番分かってるだろ。勝算は100%だ」
(俺が死んだ上で、な)
-………-
黙りこくる愛機にハルは苦笑いを浮かべ、戦闘システムを起動した。ここからは、楽しい地獄の始まりである。
-…戦闘システム起動。ハル…いえ、《《リーパー》》。今日のオーダーは?-
声音は変わらないが、口調と雰囲気が無機質さを感じさせるものへと変貌したサポートAIへ、ハルは静かに答える。
「周囲の敵の全滅。俺の生死は問わない。全力で往くぞ」
-了解-
刹那、ハルの乗るスレイヴが変形を開始。漆黒の装甲が展開され刺々しいシルエットへ変わり、両腕部から紅いビームブレードを発振。
変化はそれだけに留まらず、装甲が展開された隙間からスラスターが顔を覗かせ、頭部のバイザーが半分に割れる。
その下には、紅く輝くツインアイが隠されていた。
首を鳴らして操縦桿を握ったハルは、自機が変形完了したのを確認すると同時につぶやく。
「さーて、ぶちかましますか」
-戦闘を開始-
瞬間、ハルは500m程あったヴォイドとの距離を一瞬で詰め複数体のヴォイドを纏めて切断。続けて飛び掛かってくる蜘蛛型のヴォイドを真っ二つに両断すると、スラスターを吹かせ敵群のど真ん中へと飛び込む。
「邪魔だッ!」
両腕を振り回し自身に群がるヴォイドを次々と斬り刻んでいくハル。斬られたヴォイドは火花を散らしながら吹き飛んでいき、別のヴォイドを下敷きにした。
だがハルはそんな様子には目もくれず、ひたすら機体を駆動させヴォイド達から鈍色の命の灯火を刈り取っていく。
「翔べッ…!」
-ハイ・マニューバ-
ペダルを思い切り踏みつけると同時に、背部スラスターが爆発的な推力を生み出し空中へ飛び上がる。
そのまま紅い粒子を背部から放出して滞空すると、ハルは叫んだ。
「特殊兵装起動!|ドラゴン・ロア《龍の咆哮》!」
-ドラゴン・ロア、起動します。動力炉からのエネルギー供給開始-
機体の右腕が裂け、紅い火花が飛び散り始める。莫大なエネルギーが右腕に集約されて機体のエネルギー回路が悲鳴をあげるも、ハルは無視して出力を上げていく。
やがて一定以上のエネルギーが充填され、ハルは落下と同時に地面へ右拳を叩き付けた。すると紅い衝撃波が着弾点から発生、ヴォイド達を飲み込み巨大なドームを形成して…霧散して行った。
特殊衝撃波兵装、ドラゴン・ロア。
インパクトと同時に巨大な衝撃波を発生させ、周囲の敵を吹き飛ばす。ただそれだけの兵装だが…使い所によっては性能以上の効果を発揮することもある。
今回は、密集した無数のヴォイド達が仲間の近接兵装によって傷付き、破壊される事を期待してハルは使用、結果として彼の期待通り周囲にいたヴォイド凡そ500体が一瞬の内に戦闘不能へと陥ったのだった。
-インパクト・コア、機能停止。右腕部通常形態へ-
「まだまだいくぞ!」
-了解。機体各部異常なし、マスターも無理せず-
「分かってるよ!」
ビームソードを振り抜きながら叫び、再びの加速。すれ違いざまにヴォイドを両断し、向けられる火線に臆する事なく、むしろお返しとばかりにハルは腕部ビームランチャーを乱射。ヴォイド複数体を纏めて吹き飛ばし、着地点を確保する。
「ハイ・マニューバ!」
-スラスター全力噴射-
スラスターが焼け焦げても構わないとばかりにペダルを踏み込み、超加速。
それだけでソニックブームが軽量級ヴォイドを吹き飛ばし、両断された骸が宙を舞う。
「ハァァァァッ!!」
…機体は徐々にオイルに塗れ、損傷箇所も増えてきた。駆動部の摩耗も著しく、ナノマシン修復も間に合っていない。
それでもハルは、加速を続ける。
-マスター、残敵数の半分を撃破しました-
音速などとうに超えた超機動にヴォイドは翻弄され、紅い軌跡が通った後には残骸のみが積み重なっていき、もはや屠殺と言う言葉が相応しい光景が繰り広げられていた。
——————しかし、とうとう死神に最期の刻が訪れる。
-マスター、背部メインスラスターが脱落。高速戦闘は不可能です-
「いよいよ、か」
右腕を失い、そこら中傷だらけになった愛機のコックピットでハルは呟く。無論彼の居るコックピットも計器から火花が散り、彼自身も血を流していた。
ここまで致命的な損傷を受ける事なく戦い続けられたのは、ひとえに超高速で移動して攻撃を喰らわない様動いていたからだ。だが、その根幹たる部分が酷使によって脱落してしまった。
…幕引きだろう。
-…マスター-
「ははっ、最期がお前と一緒なら、それも悪く無いかもな」
-…私は良くありませんけどね。この様なポンコツなマスターに配属されて、死を共にするなど-
「機械音で声震わせんの上手いなお前。ま、確かに俺に配属されたお前は不運だったと思うよ。ひたすら汚れ仕事と後始末をする羽目になったからな」
-ッ…マスター、私は-
「でも、俺はお前と一緒に戦えて良かったと、心の底から思うぜ?相棒」
その言葉に、サポートAIは本来存在しない動作である息を呑み——笑った。
-私も、マスターと共に戦えて光栄でした-
「ようやく本音を言いやがったな、このツンデレ」
-ツンデレ?その様な言葉は私に相応しくありません。訂正を要求します-
「やなこった、はははっ」
ひとしきり笑った後、ハルは穏やかな表情のまま周囲を見回しコックピットの天井にあるレバーへ手を掛けた。
「まさかこれを使う時が来るなんてな」
-マスターがもう少し損傷を抑えて戦えていれば、使う機会も訪れなかったと思いますが-
「無理に決まってるだろ。俺はレンじゃねぇんだ………さて、じゃあな、相棒」
-はい、|マスター《我が主》-
「-人類の未来に幸在らん事を-」
少年とAIは、どこまでも人類のために戦い、そして散って行った。
ここまでが序章…つまり、「彼ら」の物語はここから始まる。