私は
今でも自分の原点となる記憶を
鮮明に覚えている。
いや...あれは、忘れることが出来ない。
その原点は、私がまだ小さいかった頃の出来事だ。
私は孤児だった。
1歳の頃から孤児院で過ごし
5歳になる頃に今の両親と出会った。
両親は、どうやら子供を授かることが
出来なくなり私を迎え入れたらしい。
実の子ではない私に両親は無償の愛をくれた。
両親はとても仕事で忙しそうにしていた。
だというのに私が病気になった時は
母は仕事を休み看病をしてくれた。
学校行事の際は、両親は仕事を休み来てくれた。
だから私には勿体ないくらい
とても優しい両親だった。
私は、
10歳の頃、公園で遊ぶのが好きだった。
いや、公園という場所ではなく
冒険という単語が好きな普通の子供だった。
その公園の周りは自然に囲まれており、
子供にとってはとても広い場所だった。
その日は
快晴でとても日差しの強い、
ジメジメとした日だった。
私は、公園に隣接していた森に遊びに行った。
なぜなら、好奇心によってではない。
私は、森が
肯定してくれたように思えたからだ。
私が初めて森に行った時心地よい風が吹いていた。
木が葉を揺らし、花は悠々自適に咲き誇り
空が私を歓迎しているかのようだった。
私は、その時嬉しかったのを覚えている。
その日から私は森に度々訪れた。
両親も森で遊んでいることは認知済みで
門限である17:00までに帰れば
怒ることはなかった。
ただ一つ
「森に遊びに行くのなら、足下をちゃんと見てね
木の根とかに躓いちゃうからね。」
と少し心配そうに言うだけだった。
私はその日、
好奇心が体を満たしていたからだろう
いつもより森の奥へと向かった。
10分程度森を探索していると
どこからか音楽が聞こえてきた。
その音楽は...
この世のものとは思えない...
とても美しく
聞いたことのない音だった。
(綺麗だ)と私は子供ながらにそう思った。
私は、無意識的に歩いていた。
その音がする方向にまるで
そこに行かなくてはならないかのような
運命を感じた。
音の源は廃墟のようになっている教会からだった。
私は衝動的に教会の扉を開け中に入った。
その場所は天井が老朽化で所々穴が空いており
穴から光が零れていた。
とても幻想的で神秘的な
言葉では表すことができない空間だった。
私は、圧倒され声が出せなかった。
その空間に圧倒されたわけではない。
私は、
ピアノを弾く人物によって言葉を失った。
少女がピアノを弾いていた。
白金の髪をしていた。
その姿はまるで、神のようだった。
そのピアノの音色は
喜びや幸せ、祝福...賛美歌のようだった。
頬に水が伝った。
これは涙だろうか。
私は、
人生で初めて、人ではない何かに涙を流した。
そう
この出会いは、
私が音楽を愛す最初の日であり
ピリオドに出会った最初の日、
私の原点であった。
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この作品はフィクションであり、実在する人物・団体・事件等とは一切関係ありません。