最近、原稿を読み返していて気づいたことがあります。感情を「悲しい」とか「嬉しい」とか、そのまま書いた行を、あとから消してしまうことが増えました。代わりに、窓の外の音とか、指先の動きとか、そういう小さなものに気持ちを預けてみる。書いている本人としては少し不安なんです、ちゃんと伝わっているだろうか、と。
でも読み返すと、説明してしまった感情よりも、そうやって残しておいた余白のほうが、なぜか記憶に残っている気がします。「点」の中の小さな沈黙も、鳥面化粧の姉妹が交わす視線も、折神の二人の間に流れる空気も、言葉にしすぎないことでようやく形になった部分があるように思います。
うまく伝わっているかは、正直まだ自信がありません。もしどこかの場面で、何も書かれていない部分に何かを感じていただけていたら、それはとても嬉しいことです。今週も、それぞれの物語を少しずつ進めていきます。