コミカライズ更新されました。
その小ネタです。
今回は限定公開ではなく全体公開となります。
珍しいジーク様からの呼び出しに、僕は息を切らせて走った。
その先に待っていたのは地獄でございました……
「シオン、いらっしゃーい」
すごく悪い顔をしたレーナ様に迎えられて僕は中に入った。
「何? 何? 何事」
「詳しいことはジーク様に聞いてちょうだい」
「は?」
それだけ言い残して僕の主は、急いだ様子で部屋を後にした。
そこから待っていたのは地獄だった。
「シオンさま、どうぞこれにお着換えください」
そういって取り出されたのは、以前も半ば無理やりに着せられた女性用の制服であった。
「え? 嫌なんだけど」
拒否してみたら、なんと予想外のことが起こった。
「すまない、私からも頼む」
なんとなぜかジーク様が僕に深く深く頭を下げたのである……
意味が分からない。
ジーク様から手短に語られたことは僕の想像をはるかに超えていた。
ジーク様に深くかかわるとよくないことは何となくわかっていて、だからこそ主であるレーナ様に忠告までしたというのに……したというのに……
あいつめ……
そう思う僕の頭に浮かんだのは、てへぺろっとしつつごめーんとやってる主の顔だった。
そうして僕はアンナ様とミリー様の人形となったのである。
「チークの色はもう少し抑えたほうがよさそうです」
アンナ様とミリー様がメイドに指示を出し僕の顔が作られていく。
「淡い色もかわいらしいですし、もう少し発色があってもいいとおもうのですが……」
なんて試行錯誤で進められている。
ジーク様は下手の隅でずっと申し訳なさそうにしてるけれど、これあんたのせいだからね! って睨んどいた。
あとはもうやけくそである。
どーでもいい話に、レーナ様のようにとにかく相槌を打つ。
並べられる豪華な菓子類をつまんで、楽しく楽しく。
そんな僕の頭の中にいっぱいなことがあった。
ことが片付いたらこんなことにさせた原因をどうしてくれようかってことだった。
制服と違い、レーナ様が着用されるようなねまきの予備が都合よくあつはずもなく。
実際にレーナ様が使用されている中から拝借してきることになったし、ふんわりと見知ったにおいに包まれてマジでたまったもんじゃない。
襲撃がきたとき、僕は震えた。
どうしてくれようかという怒りに。
声を出せばとても汚い言葉でののしってしまいそうで、声を押し殺して僕は怒りに震えた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
僕をさらった連中がレーナ様が無力だとわかったうえで、貴族の婚礼にすら大きな影響を与える肌にナイフを突きつけたときはもう限界だった。
もういいよね……ちょうど話の流れ的に、ここで我慢してもどうやら思ってたようにいかないし。
好き勝手に暴れだす時間の始まりだった。