明菜を無事に見つけ出し、長年抱えていたわだかまりを乗り越えた誠一。
時は10月末。
秋も深まり、穏やかな日常が戻ってきた――はずだった。
ある朝、誠一が目を覚ますと、世界からすべての人が消えていた。
電気は通っている。
テレビもラジオも動いている。
けれど、映し出されるのは無人のスタジオや、誰ひとり歩いていない街並みばかり。
まるで、世界中の人間が透明人間になってしまったかのようだった。
そんな無人の世界で、誠一の前に姿を現したのは、いちずと弥優だけ。
なぜ、ふたりだけがここにいるのか?
なぜ、自分たち以外の人間は見えないのか?
さらに奇妙なことにスマートフォンは電波が入らず、登録されているはずの連絡相手の名前さえ、ぼやけて読むことができない。
ところが、街中に残された電話ボックスと、現実ではとうに閉店したはずの駄菓子屋の黒電話からは繋がる。
宛先は、現実世界の【友垣咲子】だった。
誠一たちから状況を聞いた咲子は、ひとつの仮説を口にする。
――世界中の人間が消えたのではない。
透明化したのは、誠一自身なのではないか。
これまで、透明人間となったいちずや弥優を見つけ、触れることのできた誠一。
その誠一自身が今度は“見えない側”へ回ったことで、これまで見えているようで見えていなかった、透明化の秘密が少しずつ姿を現していく。
元の世界へ戻るため、誠一はいちずと弥優を伴い、咲子の推理を頼りに無人の街を歩き始める。そして、その途中で三人は大きな麦わら帽子を被った顔の見えないひとりの女性と遭遇する。
彼女はいったい何者なのか――?
この世界は、本当にただの「透明人間の世界」なのか――?
見えているからといって、本当に見えているとは限らない。
見えないからといって、そこに存在しないとも限らない。
【見えない彼女】たちを見続けてきた少年。
今度は、その少年が【見えない彼】となって世界を見る。
『見えない彼女の行くすえ』
第5部「透明人間にはわからない。」